フリーランスに領収書は必要なのか?その書き方について紹介。経費の考え方や宛名についても詳しく解説。

How

近年フリーランスという働き方を選ぶ人が増えてきています。フリーランスは全て自分の裁量で仕事の受注の仕方や発注の仕方ができるという自由度の高い働き方ができますが、その分、フリーランスは売上の管理はもちろん、経費の管理も自分で行わなければなりません。特に経費の申告の際に必須になる領収書について、どのように保管するべきなのか?発行する際はどのようにすればいいのか?など、お金の勉強をしないままにフリーランスになってしまったという人にとっては分からないことも多いと思います。

フリーランスにとって確定申告は必須で、その際に経費の申告をする際に領収書との照らし合わせが必要となってくるので覚えておいて損はないでしょう。この記事では領収書の発行の方法について詳しく紹介しています。また、昨今メディアで騒がれているインボイス制度についても触れています。

フリーランスはクライアントに領収書を書く必要があるのか

結論から言いますとフリーランスはクライアントや取引先に対して領収書の発行を依頼された際は、必ず領収書を発行しないといけません。あくまでも支払者が領収書の発行を求めた際に、領収書の発行義務が発生するという認識で問題ありませんので、常に金銭を受領した際に発生するということではありません。

クレジットカードで支払われた取引に関しては領収書の発行義務がないなど、状況によって異なることもありますので詳細についても紹介していきます。

領収書の書き方を簡単に解説

領収書にはある程度決まった書き方があります。日付や宛名、金額など間違ってはいけないので注意が必要です

日付は?

これは意外と軽視されがちですが、月日に間違いがあると、それだけで経費として計上できないこともあるので、領収書を記載する際にも領収書をもらう際にも年月日に間違いがないかしっかりと確認しておきましょう。

急いでいる場合、日付を1日や2日間違えることがあるかもしれません。しかし、あなたが発行する領収書は、クライアントが仕入税額控除以外にも使用する可能性があります。何らかの理由で業務スケジュールと領収書の日付を照らし合わせることがあったとき、整合性が取れないとクライアントに迷惑をかけてしまうでしょう。

宛名は?

宛名についてもルールがあり、領収書を受け取る人や会社の名前を宛名に記載するのが基本です。領収書の宛名を空けておいて欲しいと言われることや上様と記載して欲しいと言われることもありますが、名前(氏名)か会社名を記載しないといけないと伝えることでトラブルを回避できます。株式会社を(株)、有限会社を(有)と記載することもありますが、余白などに問題がない場合にはきちんと略さずに記載するのがマナーといえます。

領収書の宛名は正確に記載しましょう。前株や後株はもちろんのこと、中には一般的な発音と正式な表記が異なる場合があります。たとえばカメラメーカーとして有名なキヤノン株式会社は、一般的には「キャノン」と発音します。しかし、正式な表記は「キヤノン」ですので間違えてはいません。また、大手のグループ会社の社名にも注意が必要です。よくあるのはグループ本体の社名に似たグループ会社の社名で、「◯◯(グループ本体の社名)メンテナンスサービス株式会社」や「◯◯フードデリバリー株式会社」のような例があります。あなたが取引している会社がグループ本体の会社なのか、そのグループ会社なのか?そしてその取引先の会社の正式名称は何なのか?よく確認してから領収書を作成するようにしましょう。グループ会社であるにもかかわらず、グループ本体の社名で領収書を作ると失礼にあたります(反対も然り)。

金額は?

金額を間違えて記載してしまうと、改ざんなどのトラブルの原因になりかねませんので、金額に相違がないか受け取る際にも渡す際にも十分に気をつけて発行するようにしましょう。金額の頭に¥マークを記載して、数字を追加記入できることを防いでおきましょう。

加えて1桁目の数字の隣に横線を引くことも大切です。1桁目の数字の隣に余白があることで、後から「0」を追加で記載されて、領収書の金額が実際の金額より高くなってしまう場合があります。

但し書きは?

これは何のためにお金を受け取ったのかを記載するもので例えば飲食に使用されたものであれば「食事代として」や商品を購入に伴う時は「商品代として」などセミナーなどに参加した際には「セミナー参加代として」など、何のためにお金を使ったかが分かるように簡潔に書くといいでしょう。

領収書の但し書きとして「お品代」という言葉があります。たしかに使われることはありますが、あまり望ましい書き方ではありません。「お品代」と記載すると、何のための費用だったのか後から領収書を見たときに判断できません。また、税務調査が入ったとき、「お品代」と書かれた領収書が多いとそれらの領収書に記載されたお金を「使途不明金」と判断され、指摘を受けることがあります。余計な詮索をされないためにも但し書きをきちんと書くようにしましょう。仮に但し書きを正確に書けないような内容なら、経費処理すべき領収書ではないということになるでしょう。一時的に課税所得を低く申請できたとしても、いずれ分かるかもしれないことです。はじめから後ろめたいことはせず、収めるべき税金をきちんと収めましょう。

発行者の名前や住所

誰が誰に宛てた領収書なのかをはっきりとさせる必要があるので、発行者の会社名や名前、住所はきちんと記載しておきましょう。ぱっと見た時にどこの、どの場所で何に使ったのかが分かるのが領収書ですので、どれか一つでも欠けている場合は記載漏れの可能性があるので注意しましょう。

印鑑は?

領収書には印鑑を押すというイメージも強いと思いますが、実は印鑑を押す義務というものはなく、印鑑のない領収書でも問題なく経費として計上できます。もちろん税務署から指摘されるといったこともありませんので、基本的には必要ありませんが、日本は印鑑文化がまだ根強く残っていますので、中には印鑑を押すように頼まれることもあるでしょう。ですので、求められた際には印鑑を押すことで丁寧な対応と取られます。

領収書に印鑑が必要だと思っている方も一定数いますので、その際には快く押印することでトラブルなども回避できます。

なお、印鑑の話は電子発行された領収書にも言えることです。印鑑がなくても問題ないことを分かっていながら、領収書を電子発行する際に印影を挿入したり、反対に買い手側から印影を求められることもあるでしょう。印影を求められたら煩雑だと思わずに、相手の安心のためにも快く応じましょう。

領収書の管理方法はどのようにするべきか

自分が発行した領収書や自分が受け取った領収書はきちんと保管しておく必要があります。発行した領収書は控えをきちんと保存しておきましょう。領収書は二重発行や二重請求といったトラブルを防ぐ証拠となりますので、保管漏れがない様に注意しておくことをおすすめします。

パソコンで作成した領収書であれば、そのままクラウドやオンライン上で保管しておくのがいいでしょう。手書きの領収書は大体が複写式になっていますので、複写のものを保管しておくといいでしょう。

保管期間は?

先ほど領収書は保管しておくべきと紹介しましたが、貯めていくとすごい量になります。ではその領収書はいつまで保管しないといけないのか?というと、経費として計上した領収書は7年間の保管義務があります。もし税務調査が入った際に、7年間の領収書が保管されていないとその間に経費として申告したものが認められずに、最悪の場合、追徴課税や重加算税などのペナルティとなる可能性があるので、注意が必要です。

保管期間は7年間と紹介しましたが、これは青色申告者の場合で白色申告の場合は5年間の保管義務となります。確定申告が終わってほっとして領収書を捨ててしまうといったことがない様、気をつけておきましょう。

領収書を発行する際に注意するポイント

領収書を発行する際に注意するポイントがいくつかあるので紹介していきます。

ポイント1:5万円以上の領収書

5万円以上の領収書を発行する際には、収入印紙の貼り付けが必要となります。5万円以上100万円未満の領収書には200円の収入印紙を貼り付けます。100万円以上200万円未満だと400円分の収入印紙が必要で200万円以上300万円未満であると600円以上の収入印紙が必要となります。

この様に金額に応じて必要な収入印紙代が変わりますので覚えておきましょう。

ただし、近年では領収書の電子化などもあり、メールなどで領収書を発行する際には、5万円以上の領収書であっても収入印紙は必要ないので、あくまでも紙の領収書で5万円を超える時に収入印紙が必要となります。

ポイント2:再発行

たまに領収書を無くしたので再発行してほしいと依頼されることがありますが、これに関しては原則としてお断りをしましょう。二重計上を防ぐ意味合いでも応じるべきではありません。どうしても再発行しないといけないという状況に陥った際にははっきりと再発行と記載して分かるように対策しておきましょう。

ポイント3:クレジットカード支払いの場合

クレジットカードで支払われた取引に関しては、領収書の発行義務はありません。これは直接相手方から金銭を受領するのではなく、クレジットカード会社から支払われるという形式となるためです。

ですが、クレジットカード決済をした方からも領収書が欲しいと言われるケースがあるので、その際は発行しても問題ありませんが、ここでも二重計上にならない様に注意が必要なので、発行の際にはクレジットカード支払いと分かる様に明記しておくといいでしょう。

フリーランスとインボイス制度について

ここでインボイス制度と領収書の関係について触れます。ライターやデザイナーなどのフリーランスが納品後クライアントから求められるのは「請求書」あるいは「納品書」です。領収書を発行するのは次の業種が多いのではないでしょうか。

  • 小売業者
  • 飲食店業者
  • 写真業者
  • 旅行業者
  • タクシー業者
  • 駐車場業者

上記の業種では領収書、またはレシートがあればそれそのものが「適格簡易請求書」となり、適格請求書に準じるものになります(その代わり適格請求書は不要になります)。コンビニエンスストアでもらうレシートに適格請求書発行事業者の登録番号が書かれているのはこのためです。

ここでは上記のルールに準じて、インボイス登録の有無、領収書の発行/受領について、領収書の取扱い方法を解説します。

※1:国税庁軽減税率・インボイス制度対応室「消費税の仕入税額控除制度における 適格請求書等保存方式に関するQ&A

インボイス登録していないフリーランスの対応

インボイス登録していないフリーランスは今までの領収書と、記載内容は変わりません。領収書を発行する場合も、もらう場合もインボイス制度開始以前の記載内容が書かれてれば問題ありません。帳簿付け(記録)に関しても変更ありませんので、安心してください。

インボイス登録したフリーランスの対応

領収書を発行する場合

インボイス登録したフリーランスが領収書を発行する場合、適格簡易請求書の発行が認められている事業者かどうかで扱いが変わってきます。

適格簡易請求書の発行が認められている業種

適格簡易請求書の発行が認められている業種の場合は、適格請求書の記載項目に準じて適格請求書発行事業者番号や、税率区分、そして区分ごとの税額などの記載が必要になります。クライアントはあなたが発行する領収書(レシート)をバウチャー(証明する資料)として仕入税額控除を受けます。そのため、適格簡易請求書(領収書、レシート)に不備があると、クライアントは仕入税額控除できなくなる可能性がありますので、細心の注意のもと領収書を発行するようにしてください。

ただし、令和11(2029)年9月30日までは少額特例(※2)により税込み1万円未満については、適格請求書や適格簡易請求書の保存がなくても仕入税額控除ができます。なお、この制度は取引相手がインボイス未登録の事業者の場合でも適用されます。

これまで領収書を紛失した場合など、出金伝票を利用していたことがあると思います。しかし、インボイス制度開始後において、出金伝票では仕入税額控除ができませんので注意して下さい。

※2:国税庁「少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の概要)の概要

適格簡易請求書の発行が認められていない業種

適格簡易請求書の発行が認められていない業種においても、領収書に記載する事項は適格簡易請求書の発行が認められている業種と同様です。ただし、クライアントは適格簡易請求書の発行が認められていない領収書を消費税額控除のバウチャーとして使用することはできません。必ず請求書や納品書が必要になりますので、それらの発行を忘れずに行って下さい。

領収書を受け取る場合

適格簡易請求書の発行が認められている業種

領収書を受け取ったとき、適格簡易請求書の要件を満たしていることを確認しましょう。適格請求書発行事業者番号の記載がない場合、そもそもインボイス登録していない場合も考えられます。なお、適格請求書発行事業者であっても適格請求書発行事業者番号の記載位置がわかりづらい場合もあります。その場合は、すぐに確認するようにしましょう。

ただし、領収書に適格請求書発行事業者番号の記載がなく、別紙の明細に記載されている場合もあります。このような場合は双方をセットで保存するようにしましょう。

ただし、税込み1万円未満の場合は前述の通り、一定期間内であれば少額特例の対象となります。

適格簡易請求書の発行が認められていない業種

領収書の有無は関係ありません。適格請求書の要件を満たした請求書が発行されていれば消費税控除は可能です。ただし、適格請求書発行事業者であっても領収書を発行する際には、適格請求書の要件を満たしている必要があります。請求書と領収書を一緒に保存する場合は、領収書に不備があった場合、余計な疑いをかけられるかもしれません。そうならないように、領収書を保存するのであれば、念のため適格請求書の要件を満たした領収書であることを確認しましょう(ただし、適格簡易請求書にならない)。

適格簡易請求書とインボイス未対応の領収書の仕分け

適格請求書発行事業者が仕入税額控除を受ける場合、適格簡易請求書とインボイス未対応の一般的な領収書の両方がある場合、両者を分けて保存しなければなりません。通常、消費税控除のバウチャーとなるのは適格簡易請求書のみです。

ただし、次のような経過措置もありますので参考にしてください。(※3)

 ・2023(令和5)年10月〜2026(令和8)年9月  :80%の税額控除

 ・2026(令和8)年10月〜2029(令和11)年9月:50%の税額控除

この場合、インボイス未対応の事業者が発行する領収書であっても消費税の一部を控除できます。このため、適格簡易請求書と分けて計算する必要がありますので、結論としてやはりわけて保存する必要があるのです。

(※3)国税庁「(7)免税事業者等からの仕入れに係る経過措置

まとめ

フリーランスの領収書事情について紹介してきました。領収書は受け取る際も、発行(提出)する際も、確定申告に必要な大切な書類ですので、記入間違いや記載漏れがないように十分に気をつけましょう。フリーランスなら最低限の税金の知識は持っておくべきです。分からないことがあれば、所管の税務署に相談して正しく理解しましょう。無料で教えてくれます。また、経理ソフトや会計ソフトはインボイスに対応したものを導入しましょう。

金額によっては収入印紙が必要になりますので、そちらも忘れずに覚えておく必要があります。基本的に、金銭のやりとりがあり、金銭の支払いをした方が領収書の発行を求めた際には発行しないといけないという風に覚えておくといいでしょう。

税金は社会にとって必要なものですが、一方で節税も重要です。それはフリーランス(個人事業主)であったも法人であっても同様です。領収書を活用して上手に節税しましょう。

投稿者プロフィール

松田勇
私は10年以上にわたり、デザイナーとしてのキャリアを積んできたフリーランスデザイナーです。デザインの魔法に魅了され、クリエイティブなアイデアを実現することが私の情熱です。
さまざまなデザインプロジェクトに携わり、ロゴ、ウェブ、印刷物、パッケージなど、多岐にわたる分野での経験を積んでいます。美しさと実用性を融合させ、クライアントのビジョンを実現するお手伝いを心から楽しんでいます。
クライアントとの協力を大切にし、オープンなコミュニケーションを通じて共にプロジェクトを築き上げます。納期を守り、高品質な成果物を提供することをお約束します。
私のデザインはビジネスに魅力を与え、ブランドを輝かせます。クリエイティブなアプローチと柔軟性を大切にし、クライアントの期待をいつも超えることを目指しています。一緒に素晴らしいプロジェクトを実現しましょう。

関連記事一覧

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP