フリーランスになるために必要な準備とは?事前に知っておきたい手順や会社員との違いについて紹介します

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副業ブームや新型コロナウイルス蔓延をきっかけに、フリーランスとして自由な働き方をしたいと興味を持っている人が増えています。実際に周りに副業を始めたという友人や同僚も多いのではないでしょうか。まずは会社員を続けながら、副業が起動に乗るまで様子を見る人が多く、安定した収入を見込めるようになるとフリーランスを考える人が大半でしょう。しかし、いざフリーランスになろうとしても必要な準備を理解していないとなかなか一歩踏み出せなかったり、反対に無計画に独立して失敗してしまいます。そこで今回は、フリーランスになるために必要な準備や会社員との違いについて紹介します。フリーランスとして活動していきたい人は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

フリーランスになるために必要なこと

フリーランスを目指している場合、会社を辞める前に何をする必要があるのか知っておく必要があります。社会保険関係の手続きなど会社を辞めてから、やらなくてはいけない手続きがあるのです。

  • 厚生年金から国民年金に切り替える
  • 健康保険から国民健康保険に切り替える
  • 開業届を提出する
  • 白色もしくは青色申告承認申請書を提出する

特に、年金と健康保険の切り替えには申請期限が設けられています。期限が過ぎてしまった…と後悔しないよう、期日は把握しておきましょう。フリーランスに退職金はありませんが、小規模企業共済に加入すれば退職金の代わりとなるお金を積み立てられます。このような制度も利用してみてください。

フリーランスになるために必要な準備

それでは、フリーランスとして新たに歩みだす場合、具体的に何を準備すべきなのか解説していきます。

年金を切り替える

会社を辞めてフリーランスとして活動していく場合には、厚生年金から国民年金に切り替える手続きが必要となります。会社員として働いている期間は、厚生年金に加入していますが、退職することで厚生年金への加入資格を失ってしまいます。そのため、フリーランスとして独立する場合には、国民年金保険料を払う必要があるのです。必要な手続きに関しては、居住している市区町村役場で切り替えることができます。持参すべきものはいくつかありますが、年金手帳を忘れないように事前に準備しておきましょう。万が一、年金手帳を紛失している場合には、市区町村役場とは別に年金事務所で再発行手続きを行う必要があります。手元にあるのか確認し、万が一紛失している場合はまず探すようにしましょう。

健康保険を切り替え

厚生年金同様、会社を退職する時点で会社の健康保険からも外れることになります。そのため、国民健康保険に加入する手続きを行いましょう。手続きですが、年金と同じく居住している市区町村役場で手続きを行うことができます。

国民健康保険に加入するほか、現在の健康保険(社保)を任意継続で利用したり、特定の職種の人だけが加入できる文芸美術国民健康保険(文美国保)に加入する方法もあります。ただし、国民健康保険は(同じ年収の場合)国民健康保険より割高、任意継続の場合の保険料は退職時の標準月額報酬によって2年間固定となる(2年後には脱退)、文美国保は職種に制限があり業界団体に所属しないといけないなど、それぞれにメリット・デメリットがあります。

独立初年度は、会社員時代より売上(収入)が下がることが予想されます。どの健康保険が経済的なメリットがあるのかよく比較したうえで検討しましょう。なお、健康保険の任意継続を希望する場合は、資格喪失(退職日)から2週間以内に申請しないとなりません。

開業届の提出

新たにフリーランスとして仕事を始めた場合、開業届の提出が必要になります。開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」となり、仕事を行う事務所を新設したり、移転した場合にも提出が求められます。開業届の提出先は、納税地(事業を行う住所)を管轄する税務署となりますが、コロナ過でオンライン対応も可能になりました。定型フォーマットに必要事項を記載し、最寄りの税務署宛に郵送します。開業が認められると控えが返送されますので、内容を確認しましょう。開業届には提出期限が設けられています。開業日から1ヶ月以内となるため、期日に間に合うように対応しましょう。

白色もしくは青色申告承認申請書の提出

フリーランスになると、1年間のお金の流れを記録して、決められた期間内に確定申告をしなければなりません。確定申告には、白色申告と青色申告があるため、より自分に合う申請方法を選択しましょう。ちなみに、白色申告よりも青色申告の方が控除額が大きいため(青色申告特別控除=最大65万円)、節税を目的に青色申告を選択する人が多いです。白色申告より帳簿付けは複雑ですが、会計ソフトを使用するとそのデメリットはほぼありません。控除を上手に活用して課税所得を小さくし、節税しましょう。

例年、確定申告は2月中旬から3月中旬の1カ月間に提出する必要があります。ちなみに12月に開業した場合、最初の年は開業日から2か月以内に確定申告を行う必要があります。これは先ほどの開業届と一緒に提出することもできるので、一緒に用意しておくと手間を省くことができるので、こまめに収支を管理しておきましょう。

会社員からフリーランスになる人がやる準備

手続き以外にお金周りで行っておきたい準備についても紹介します。

仕事用の口座をつくる

仕事の受注管理や確定申告をスムーズに行うために、プライベート用とは別に仕事用の口座を用意しましょう。仕事用の口座を準備しておくと、お金の流れが把握しやすく、不備があった場合にも気付きやすいメリットがあります。また、自宅を事務所として利用する場合、光熱費や通信代なども経費として計上できるため、仕事用の口座で一括管理しておくと節税にもなるのでおすすめです。開業届を提出すると、屋号で銀行口座を開設できます。そうすれば後で法人化するときに改めて銀行口座開設の必要がありません。仕事用のクレジットカードも同時に作っておくと便利でしょう。

1年ごとの売上計画をイメージする

会社員で働いているころは、安定した収入があり、不安を抱えずに生活を送ることができたでしょう。しかし、フリーランスとして仕事をしていく場合には、どのような1年にするのか明確な売上計画を立てておくことが大切です。毎月どのくらい必要経費がかかるのか、そしてどの程度の売り上げが見込めるのか、最初は大まかな概算でも問題ないので、把握しておくと苦労するリスクを減らせます。もちろん計画を立てるだけで満足せず、きちんとクラウドソーシングサイトやエージェントサービスを利用するなど営業して、計画通りに売上を建てて実績を作りましょう。

会計ソフトで帳簿をつける

もし、青色申告をする場合には複式簿記の形式で帳簿をつける必要があります。しかし、初心者が複式簿記を作成するのは難しいため、青色申告ができる青色申告用の会計ソフトを登録して利用するのがいいでしょう。会計ソフトを無料で利用できるサイトもいくつかあるので、事前に確認しておきましょう。自分で会計ソフトを利用するのが難しい方や面倒という方は、プロである税理士に依頼するのもおすすめです。自分に合った方法で、しっかり複式帳簿をつけるようにしましょう。当然ですが税理士に相談や依頼をすると費用が発生します。その費用以上に稼げるのなら依頼するメリットがありますが、稼げないうちから税理士に依頼するとキャッシュを失うデメリットが大きいでしょう。はじめは自分で帳簿付けや確定申告をの作業をして流れやコツを把握し、内容が理解できた時点で税理士に依頼する方がよいでしょう。そうでないと、税理士の話が理解できないだけでなく、もし自分の意図に反する会計処理をされても気付かない場合があります。また、税理士の方針の決め方に納得できなくても、知識がないと意見できないこともあります。

備品を準備する

会社員時代には、会社が用意した備品をいつでも利用できましたが、フリーランスとして活動する場合には、すべて自分で用意する必要があります。自分を知ってもらうための名刺や請求書作成時に必要となる印鑑、契約書や書類を整理するためのファイルなど、仕事に関連する備品を準備しましょう。また、契約書や請求書については、使いまわせるようにフォーマットを準備しておくのもおすすめです。クライアントによっては、請求書を指定するケースもありますが、フォーマットを用意しておけば事務処理もスムーズに済ませることができます。請求書は会計ソフトで簡単に作成できる場合もあります。特に適格請求書発行事業者の場合は、一般的な請求書より記載項目の多い適格請求書を発行する必要があります。そのようなとき、予めフォーマットがあると抜けが発生せず使いやすいでしょう(インボイス制度については詳細を後述します)。フォーマットはインターネット検索で探して活用することもできます。

フリーランスと会社員との違い

フリーランスとして活動したいものの、会社員との違いについて理解できていますか?雇用形態が違う程度は分かる!という人が大半かと思いますが、それ以外にもフリーランスと会社員の違いはいくつかあります。違いを理解することで、どんな働き方がベストなのか整理することもできるので、行動し始める前にしっかりと理解しておきましょう。

雇用契約の違い

会社員は、企業と雇用契約を結んでいます。求められている労働を行うことで、賃金を得られるのです。また、雇用形態が正社員の場合には、雇用期間に定めがないのも特徴といえます。一方、フリーランスは企業と雇用契約ではなく、業務委託契約(請負契約)を結びます。プロジェクト内容によって契約期間も異なるため、数か月から数年など、クライアントとの契約には大きな違いがあるといえます。

収入が安定しているかどうか

会社員として働いている場合には、雇用契約によって定められた収入を毎月得られます。しかし、フリーランスの場合には、クライアントから案件を受注できなければ収入がありません。反対にたくさんの案件を獲得できれば、大幅に収入を増やすこともできます。これをハイリターンハイリスクととらえる人も多いでしょう。

スケジュール管理

会社員の場合、雇用契約によって定められたスケジュールで仕事を行うケースが大半です。出勤日や休日が明確で、企業の規則で決められた範囲内で仕事を行います。対して、フリーランスは、拘束時間を自分で管理できます。例えば、出勤日(稼働日)や休日に関しても、仕事内容によって調整することができるため、自由度が高く自分のペースに合わせて働くことができるのがメリットです。とはいえ、クライアントと契約した期日までに納品できないと、今後の取引にも影響が出てしまうためスケジュール管理能力が求められます。

インボイス制度に登録した方がよい?

世間を騒がせているインボイス制度ですが、これからフリーランスになる人にとっては、登録したほうがよいのか迷うでしょう。ここではインボイス制度の概要とメリット・デメリットを紹介します。

消費税支払いの流れ

インボイス制度の説明の前に、消費税の流れについて簡単に説明いたします。

晴れてフリーランスになったあなたはクライアントから仕事を受注するでしょう。たとえば税抜き10,000万円で仕事を受注すると、消費税込み11,000円の請求書を作成するでしょう。そして、あなたは案件報酬10,000円と消費税1,000円を手に入れるのです。

一方、あなたのクライアントはあなたに報酬を支払う前後で、さらに先のクライアント(便宜上、お客さんと呼びます)から報酬を得ています。そのときの報酬額が20,000円、そして消費前が2,000円だとしましょう。

このときクライアントの前々年度の売上が1,000万円を超えている場合(課税事業者)、クライアントはお客さんから預かった消費税2,000円と、あなたに払った消費税1,000円との差額である1,000円を国に納めるのです。

あなたの前々年度の売上は500万円でした。売上が1,000万円以下のため、消費税を国に納める義務はありません(免税事業者)。あなたが受け取った消費税はそのままあなたの収入になるのです(益税)。

これが消費税のお金の流れです。ポイントは①課税事業者は消費税の差額(仕入税額控除)を納税する、②免税事業者は消費税納税の義務がないという点です。

インボイス制度の概要

消費税の流れがわかったところで、インボイス制度の概要を説明します。インボイス制度がはじまると、仕入税額控除をするために「適格請求書」が必要となります。適格請求書とは、従来の請求書に適格請求書発行事業者の登録番号(以下、登録番号)など必要項目を加えたものです。インボイス制度開始後は、適格請求書がないと仕入税額控除ができないのです。

仕入税額控除ができないとどうなるのでしょうか?

先ほどの例の場合、クライアントはお客さんから預かった消費税と、あなたに支払った消費税の差額を納めていました。差額を計算できるのは、あなたに支払った消費税が認められているためです。しかし、もしあなたが適格請求書が発行できないと仕入税額控除ができなくなり、クライアントはあなたに消費税1,000円を支払ったうえで、消費税2,000円を国に納める必要が出てくるのです。

クライアントが仕入税額控除をするためには、あなたイがンボイスに登録して適格請求書発行事業者になる必要があります。これでクライアントは従来通り仕入税額控除ができるようになります。

インボイスに登録するとどうなるのか?

しかし、インボイスに登録したあなたは、これまで免除されていた消費税の納税義務が発生するのです。もちろん、あなたも仕入税額控除ができます。そのため、受け取った消費税全額を納税する必要はありません。しかし、今後はあなたの支払先がインボイスに登録して適格請求書発行事業者にならないと、あなたが仕入税各控除をできないのです。

インボイス制度とは巧妙に全員の足並みが揃うように誘導するような制度なのです。消費税額の負担が増えるのはともかくとしても、それにかかる事務処理も増えます。そのため、インボイス制度そのものにはほとんどメリットがありません。強いていうなら、税収が増えて社会が少しでもよくなる方向になることでしょうか(増えた税収を政治家や行政がうまく活用できるかは別問題ですが)。

インボイスに登録するメリット

インボイス制度そのものにメリットはありませんが、日本中の事業者全体が同じ状況にあるため、登録することで得られるメリットはあります。それは新規案件を獲得しやすくなることです。

先ほどの例にあった通り、適格請求書発行事業者からすると取引先(支払先)が免税事業者の場合、仕入税額控除ができません。そのため、クライアントからすると同じような実力のフリーランスがいた場合、自然に適格請求書発行事業者を選ぶでしょう。つまり、新規案件を獲得していきたいフリーランスにとっては、インボイスに登録するメリットがあるのです。

インボイス制度に登録するデメリット

インボイス制度に登録するデメリットは世間で騒がれている通りです。仕入税額控除後の消費税を納入する義務が発生することと、それにかかる事務処理が煩雑になることです。ただし、一定期間は消費税計算を簡単にする経過措置(2割特例)もありますので、制度をよく理解したうえで登録・利用してみてください。特例を受ける条件やその他の情報は国税庁のHPでも確認できます。正しい知識を身に着けましょう。

インボイス制度の損失はそれほど大きいのか?

インボイス導入に反対するフリーランスは多くいます。利益が減少するうえに手間が増えるため、反対するのは当然でしょう。しかし、中には消費税を納税することによって生活ができなくなる、というようなフリーランスもいるようです。

消費税額は売上の10%です。実際には仕入税額控除をするため、割合はさらに低くなるでしょう。たしかにこれまで利益(益税)だったものが減るため、生活は苦しい方向に向かうでしょう。しかし、その程度の利益が減っただけで生活ができなくなるなら、はじめから事業として成り立っていないのではないでしょうか?

近年は会社員からフリーランスへ転向する人が増えています。その中にはフリーランスとして長く生き残っていく人もいれば、うまく利益をあげられずふたたび会社員に戻る人もいるでしょう。フリーランスは、会社員とは異なる意味で厳しい世界です。たしかに煩わしい人間関係には悩みませんが、売上をどれだけ立てられるかという責任はすべて自分にあります。

インボイス制度は、このような環境で生き残っていくフリーランスをフィルタリングする機能もあるのではないでしょうか?きっとあなたの「フリーランスになりたい」という覚悟の強さを確認するのに役立ちます。

まとめ

今回は、フリーランスになるために必要な準備や会社員との気になる違いについて紹介してきました。フリーランスになるためには、会社員時代に加入できていたものの権利がなくなってしまうため、国民年金に切り替えたり国民健康保険に切り替える必要があります。また、開業届や白色もしくは青色申告承認申請書の提出など、やらなくてはいけない手続きが多くあります。きちんと手順を把握したうえで、一つずつこなしていきましょう。また、フリーランスと会社員との違いには、契約の種類はもちろんのこと、収入が安定しているかどうかやスケジュール管理能力が求められることもお分かりいただけたかと思います。いずれにしてもメリット・デメリットの両方を持ち合わせているため、より自分に合った働き方かどうか考えしましょう。そのうえでフリーランスとして活動していきたい場合には、本記事を参考にチャレンジしてみてください!

投稿者プロフィール

廣石健悟
廣石健悟
12年の会社員経験(メーカーの機械設計など)を経てフリーライターになりました。会社員の良さ、フリーランスの良さそれぞれを実際に体験しています。記事執筆の他にインタビュー、取材(写真撮影含む)もできます。

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