日本でも終身雇用や年功序列の制度維持が難しくなり、会社員でいることのメリットは薄れてきているのが現状です。しかし、フリーランスには不安がつきもの。その不安を払拭する特効薬は売上を確保することです。この記事ではこれからフリーランスになる方や、フリーランスになったけど思うように売上が上がらず不安に思っている方に向けて書きました。
フリーランスが不安を感じる五つの原因
フリーランスは基本的に相談相手がいません。そのため、自由と引き換えに不安を受け入れる生き方ともいえます。ここでは代表的な不安をいくつか紹介いたします。
仕事がない/続かない
一つ目の不安は仕事がない、あるいは続かないということです。
フリーランスは自ら案件を獲得するところから仕事がはじまります。企業常駐型の長期契約など一部の安定した案件を受注している場合を除けば、報酬はどうしても不安定になります。先月は休めないほど忙しかったのに、今月はなかなか予定が埋まらないという事態に陥りやすいのもフリーランスの特徴です。
実務と営業が両立できない
営業の甲斐もあり、ある程度の量の案件を受注できるようになったとしましょう。
そうするとすぐにスケジュールが埋まり、暇な時間はなくなるでしょう。そうなると新しい案件を探す時間(営業の時間)を取りづらくなります。営業しないと単価が上がらない、しかし営業するためには今ある仕事を手放さないといけないというジレンマに陥るでしょう。
税務処理の知識と実務
フリーランスになると逃げられないのが確定申告です。
確定申告の原理や処理を理解するには簿記の知識が必要です。しかし、実務をやりながら簿記の知識を習得するのは時間的に難しいこともあるでしょう。近年では売上やコストを手動入力(ソフトによっては自動入力)すれば集計、そして税金の金額を計算してくれる会計ソフトがあります。確定申告の処理そのものは会計ソフトに任せれば、簿記の知識がなくてもある程度対応できます。必要であれば、税理士に依頼することも考えてみましょう。
ローンを組みづらくなる
ローンには二種類あり、事業用とプライベート用で事情は少し違ってきます。
事業用であれば事業計画書をきちんと作成し、銀行や日本政策金融公庫などに説明すれば一定額のローンは受けられる可能性はあります。しかし、プライベートのローン(住宅、自動車など)は社会的信用の低いフリーランスにとってはハードルが高いものです。
ただ、そもそもプライベートにおいてローンを組む必要性があるか考える必要はあります。ローンを組まないと買えないようなものを、フリーランスとして稼げていない時期に買わないといけない理由を自分自身によく問いかけてみましょう。
病気になったら仕事ができない
病気になったら仕事ができないのもフリーランスの大きな悩みの一つです。年次休暇どころか傷病手当もないフリーランスは、仕事ができなくなればすぐに収入が途絶えます。つまりいつ収入が途絶えるか分からない働き方なのです。
エンジニアやライター、デザイナーなど自分で手を動かさないと収入にならないフロー型事業の場合は、なおさらこの特徴が顕著です。
フリーランスで仕事がなくなったらどうすればいいのか?
フリーランスをしていて仕事がなくなったら……と心配する方は多いと思います。そのようなときはとにかく営業をかけて案件を獲得しましょう。クラウドソーシングサービスやフリーランスエージェントへの登録、企業への直接営業(インターネットで案件検索)、知人・友人の伝手。なりふり構っていられる状況ではありません。案件を獲得できるまで、諦めずに営業をかけ続けましょう。
フリーランスが不安を減らすためにやるべきこと
フリーランスとして働きながら不安を減らすには、どのような方法があるのでしょうか?
目標売上(収入)を決める
まずは目標とする売上を決めましょう。目標がないといくら稼げばいいのか分からず、現在の売上が多いのか少ないのかすら分かりません。目先の売上目標も大切ですが、1年後や2年後など近い将来のことを考えましょう。
目標に向かって努力している時間は充実しており、たとえ足元の売上が目標に届いていなくても努力している間だけは不安を忘れられるためおすすめです。
高単価案件や長期契約案件を探す
売上を伸ばすためにできることを考えましょう。シンプルなのは高単価案件と長期継続案件です。高単価案件の場合、単価は高いものの継続的に受注するのが難しい案件があります。一方長期継続案件は単価が低いとしても、安定して受注できます。両者を組み合わせて相乗効果で売上を伸ばすようにしましょう。
また、自らが成長することも売上に直結します。高単価案件の受注頻度を高めれば安定的に売上を確保できたり、実績を提示しクライアントに交渉することもできるでしょう。長期継続案件のクライアントから信用が蓄積されて単価が上がったりするでしょう。そのためには、情報収集やスキルアップの時間も必要です。
収入を一定額保証する保険もありますが、稼げないうちから掛け捨ての保険料を払うか、その分稼ぐかはあなたの考え方次第です。
仕事を選びすぎない
高単価案件と長期契約案件は安定的に売上を確保する上で必要ですが、特にフリーランスになってすぐの頃に条件の良い案件を獲得できることはそう多くありません。そのため、案件を選びすぎず眼の前の案件を受注するほうが目先の売上につながります。
ストック型の事業を育てる
フリーランスの仕事といえば、働いた時に働いた分だけ売上が立つフロー型の事業を想像するかもしれません。しかし、ブログやECサイト運営などある程度自動で売上が立つ仕組みを作っておけば、仕事ができなくなっても収入が途絶えることはありません。もしもに備えてきちんと準備しておきましょう。
しかし、ストック型事業は一般的に、フロー型事業よりファーストキャッシュを得るまでの時間がかかるといわれています。また、売上の伸びも爆発的ではないため根気よく事業を継続してスキルを高めていく必要があります。
フリーランスを継続するためのポイント
フリーランスとして活躍し続けるためには、中長期的な対策を行う必要があります。ここではフリーランスを継続するためのポイントについて解説します。
①金銭感覚を乱さない
フリーランスの場合、会社員と比べ毎月の収入が異なります。会社員は毎月決められた月給をベースに、残業代など多少の増減が発生するものの、安定した収入を得ることができます。一方でフリーランスの場合には、収入に波があるため、月によっては前月の倍の収入を得ることもあります。収入が増えた分、出費も増えてしまうフリーランスが少なくありません。お金の使い過ぎが原因で計画的な貯金ができず、生活に支障を与えてしまう可能性があります。毎月の収入に変動があったとしても、金銭感覚を乱さず計画的にお金をまわす管理は必要といえます。中長期的な収入見込みと生活費を計算し、老後も見据えた計画的な貯蓄をカンガていくことが大切です。
②老後の資産
フリーランスの場合、会社からの退職金がないため老後の資金を積み立てておく必要があります。国からもらえる年金に頼るのも否定しませんが、フリーランスとして仕事を継続していても生活が成り立つ程度の貯蓄は備えておくといいでしょう。また、老後の資産は多ければ多いほど不安を取り除けますが、今の自分に投資しておくことでフリーランスとしてさらに活躍することも期待できます。積み立てと投資の適切なバランスを見極めて、老後資産を積み立てていくのも大切なポイントの一つです。
③スキルをアップデートし続ける
会社員の場合には、入社直後から研修があったり資格を取得するための制度が整備されています。しかし、フリーランスの場合には、自ら行動をとっていく必要があります。特に定期的な研修など案内が手元に来ないため、どんなスキルを磨くべきなのか、今身に付けるべきスキルを見定めることも必要となるでしょう。
また、一度スキルを身に付けたとしても、時代遅れになっていることに気付きにくいのもフリーランスの難しい所です。そのため、常にアンテナをたてて最新情報をキャッチし、自分自身のスキルをアップデートし続けることが求められます。これはどんな業界であっても、共通していることなので、必要とされているスキルを察知し、スキルを磨き続けましょう。
④健康診断を受ける
フリーランスの場合、自分の健康状態に関してもきちんと管理する必要があります。特にフリーランスは、就業時間が決まっていない傾向にあるため、不規則な生活を送っている人が多いです。フリーランスは1人で仕事をしていることが多いため、周囲の指摘を受けられず自身の異変に気付けないことも少なくありません。例え、身体に異常が感じられなくても、定期的に健康診断を受けるように調整しましょう。
先でも紹介したように、フリーランスは体調不良や病気にかかってしまうと、収入に影響をもたらします。仕事復帰までに時間がかかればかかるほど、生活が苦しくなることも予想されます。早期に病気に気付くことができれば、完治するまでの時間も短縮することが期待できるでしょう。どうしても、健康診断は自己負担の金額も大きいため後回しにしてしまう傾向にありますが、時間を作って健康診断を受けましょう。
⑤人脈を広げておく
トラブルが原因で、仕事や収入が継続できない場合、助けになってくれる人脈を作っておくことも大切です。人脈を広げておくことで、ピンチの時にはトラブル対応を手伝ってくれたり、タイミングが合えば仕事を紹介してもらえることもあるでしょう。反対に、自分自身が誰かの助けになれる可能性もあります。
フリーランス同士の勉強会や交流会の情報を集めて、参加してみるのがおすすめです。余力がある方は、今後の交流を築くために自身で小規模のイベントを開催して、関係を構築していくのもいいでしょう。イベントや交流会を通じて出逢った仲間は、同じ苦労をしていることもあり、分かち合えることも多いです。手間をかけずに人脈を広げたい方は、インスタやTwitter(現X)などを駆使して、人脈を広げていくのもいいでしょう。
⑥老後の資産形成
老後に受け取ることができる国民年金だけでは収入に不安を感じる人もいるでしょう。年金に頼らずに、すでに用意されている制度をうまく活用することで、老後の収入増を期待できます。例えば、国民年金基金やiDeCo、流行りのNISAなど、年金保険料を上乗せする形で納付したり、情報収集は必須となりますが、投資や積み立てという方法もあります。
⑦働き方を見直す
定期的に今の働き方がベストなのか、見直すことも大切です。フリーランスは通常の会社員よりも縛られない分、自身でコントロールする力が試されます。目標とする売上を達成するために、工数を無駄にとっていないか、さらに効率化できる働き方ができないか模索してみてください。目標に向かって努力している時間は充実しており、たとえ足元の売上が目標に届いていなくても努力している間だけは不安を忘れられます。
また、1年後、5年後、10年後と中長期的な目線で今の仕事はずっと続けたいと思えるのかや将来の仕事の可能性についてなど、将来について考える時間を持つのは大切です。直近のことばかりを考えすぎず、長く働き続けるためのベストを考えていると、不安を取り除けるかもしれません。
⑧ある程度無収入でも生活できる資金を作っておく
フリーランスとして活躍していたとしても、いつトラブルが発生するかは予想ができません。自身が病で倒れてしまうことや親の介護で仕事がうまくできなくなってしまう状況など、考えられるリスクは数え切れません。そのため、不安を解消するためにも、ある程度無収入でも生活できる資金を作っておくのも重要です。
フリーランスのなり立ては、資金を確保するのが難しいかもしれませんが、ある程度金銭的な余裕をもたないと、精神的に参ってしまうことも考えられます。例えば、1年間無収入でも生活できる資金はどれくらいなのか、計算しその金額は常に確保するような習慣を身に付けておきましょう。
生活できない状態になったらやるべきこと
フリーランスは非常にリスクの大きい働き方です。どれだけ手を打ってもうまくいかず、挙句の果てに生活すらできない状況になることも十分考えられます。そのようなとき、どういった対策を取ればいいのでしょうか?
働ける場合
働ける場合は会社員など雇用契約を結ぶ働き方を検討しましょう。面接にさえ受かれば仕事を得られ、目先のお金(給料)が手に入ります。面接では空白期間のことを聞かれるかもしれませんが、自信を持ってフリーランスの経験を話しましょう。
フリーランスとして生活ができない状態になってしまったタイミングも重要となります。正社員として再就職をするのであれば、早ければ早いほど採用確度は高まります。会社員としての採用が厳しくなるボーダーが40歳です。もちろん40歳を過ぎても、実績やスキルがあれば、採用される可能性はあるので、安心してください。フリーランスとしてやった仕事をまたしたいと思うのなら、関連した職種で社員になる方が、後々人脈を広げることにもつながるのでおすすめです。
働けない場合
働けない場合は生活保護を申請しましょう。各自治体では予算の都合上、生活保護申請希望者を窓口で追い返す「水際作戦」が取られることもありますが、対象であれば生活保護を受けることができます。許可を得た上で担当者とのやりとりを録音・録画する、あるいは生活保護申請を支援するNPO法人の方や弁護士に付き添ってもらい生活保護を申請し受理してもらいましょう。
資金を調達したい場合
資金繰りが厳しくなってしまうことも考えられるため、事前に資金を調達する方法についても知識をつけておきましょう。手軽な資金の調達方法には、銀行からの借入や公的機関からの借入、カードローンなどが挙げられます。まずは、リスクが少ない銀行・公的機関からの借入から検討しましょう。利率が比較的低く、フリーランスの仕事が軌道に乗れば返済もしやすいです。反面、準備が必要であったり、借入できるまでの期間がかかる傾向にあります。時間をかけても、審査が厳しく借入ができない可能性もあるため慎重に進めていきましょう。カードローンは簡単に資金を調達できますが、利率が高い傾向にあるため、返済が難しくなるリスクがあります。
近年ではファクタリングと呼ばれる、売掛債権を売却して、比較的早く資金を調達できるサービスを利用している人も増えています。受け取るはずの報酬を先に受け取れるサービスのため、返済の必要がないのが嬉しいポイントです。
おわりに
この記事ではフリーランスが感じる不安と、その解消方法を述べました。これまで述べてきたようにフリーランスは非常にリスクのある働き方です。しかし、同時に得られる自由もあるため、働き方というよりむしろ生き方といった方がピンと来るかもしれません。
フリーランスになることが正解ではなく、会社員でも日々幸せを感じて働いている人もいます。職業選択の自由が認められている日本において、どのように生きるか選択する権利はあなた自身にあります。
投稿者プロフィール
- 12年の会社員経験(メーカーの機械設計など)を経てフリーライターになりました。会社員の良さ、フリーランスの良さそれぞれを実際に体験しています。記事執筆の他にインタビュー、取材(写真撮影含む)もできます。
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