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フリーランスになるなら手取りでいくら稼げばいい?
フリーランス(個人事業主)として働く場合、現在の月収と手取りをしっかりと区別して理解しておくことが重要になります。
というのも、会社員であれば給与より天引きされる各種税金や社会保険料を月収から自分で納める必要があるからです。
月収から引かれるものとしては、「所得税」「住民税」「健康保険料」「国民年金」が挙げられます。
そのうえで、フリーランスとして生活していくためには最低月収20万円、手取り15万円程度が必要だと考えられています(居住地や家族構成による)。
後ほどシミュレーションをご紹介しますが、実際に手取り15万円の生活は、出来なくはありませんが、ほとんど余裕がないものだといえます。
そのため、実家暮らしで家賃がかからないというように固定費を抑えられるような環境にいる場合以外は現実的にはかなり厳しい金額だといえます。
この記事ではフリーランスとして必要な売上や、業種別の平均売上などの情報をお伝えします。
フリーランスで余裕のある生活はいくら稼げればいいか
それでは、フリーランスである程度の余裕をもって生活していくにはどのくらいの収入が必要なのでしょうか?
結論から申し上げますと、フリーランスとして自立して生活していくためには月収30万円、手取り23万円程度が必要だと考えられています。
先にご紹介した手取り15万円と比較すると、8万円の余裕がある手取り23万円であれば、無駄な出費を抑えればある程度余裕をもって安定した生活を送っていくことができるでしょう。
しかし、生活していると、医療費や結婚式への参加など急な出費が必要となる場合があります。そういった場合や将来に備えて、貯蓄できるときにコツコツしていくことが重要になってきます。
月収20万円~30万円稼ぐフリーランスの生活モデル
続いては、月収20万円~30万円の場合の生活モデルシミュレーションを見ていきましょう。
家賃 60,000円
水道光熱費 10,000円
食費 20,000円
通信費 5,000円
日用品 10,000円
娯楽・趣味 15,000円
交際費 15,000円
交通費 10,000円
医療費 5,000円
上記の合計金額が15万円であるため、月収20万円の場合でも、ほぼ固定費だけですべてを使ってしまう状態になります。もし実家暮らしであれば、家賃を削減することができるため、毎月の出費を抑えることができます。しかし、実家暮らしでない場合は、その他の出費を含めて削減することはかなり厳しいものとなります。
保険などの加入は項目に含めていませんので、いざというときの備えができていないという状態になっています。そのため、入院が必要なケガをしたり病気になったりした場合には、医療費などの大きな出費も予想されます。これだけでは安心した生活とは言えません。
そのため、医療保険への加入や交通の便が良い場所、比較的新しい物件への入居などを検討したい場合、最低でも月収30万円、手取り23万円程度の収入が必要だと言えます。また、フリーランスは毎月の収入が一定ではなく、収入が不安定です。40万円稼げる月があれば、15万円しか稼げない月があるかもしれません。そのため、生活が安定し貯蓄が貯まるまでの間は、出費を抑えて貯蓄や投資に回すことが大切です。
フリーランスになるなら今の1.5倍~2倍は稼ぐべき
会社員がフリーランスに転向して働き、今の生活水準を維持するためには、現状の1.5倍~2倍程度の収入を確保する必要があると言われています。それはお伝えしている通り、フリーランスの場合、各種税金および社会保険料を自分で納める必要があるためです。また会社員のような労災保険や休業補償がないため、福利厚生などの特典を受けることもできません。税金および社会保険料のみを考慮すれば、1.2倍~1.5倍程度の収入を確保すればよいとされていますが、後述の各種補償を考慮すると、1.5倍~2倍程度の収入が必要となってくるといえます。
フリーランスになると、自由度が増す分、すべてを自分で対応しなければなりません。したがって、会社員の時に受けていたさまざまなサポートを自分で賄う必要があります。
フリーランスになる人は必ず税金の勉強もすること
先ほどからお伝えしているように、月収と手取りについてはその差を正しく理解しておらずに月収ベースで生活を組み立ててしまうと、かつかつどころか赤字となってしまいます。
フリーランスが月収から支払う税金を確認していきましょう。
1,所得税
はじめに、所得税は課税対象の所得金額に応じて税率が決まります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円~330万円 | 10% | 97,500円 |
330万円~695万円 | 20% | 427,500円 |
695万円~900万円 | 23% | 636,000円 |
900万円~1,800万円 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円~4,000万円 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
所得が高ければ高いほど税率が高くなる累進課税制度に基づいて金額が決定されます。なお、フリーランスで所得税が発生するのは、所得が48万円を超えた場合です。所得とは、収入から経費を差し引いた額になります。経費によっては所得税の対象外となる可能性があるということです。したがって、フリーランスとして働く場合には、経費を正しく明確に把握しておく必要があります。
2,住民税
居住している自治体に納める住民税は、会社員のように会社が特別徴収に基づいて天引きするということがないため、普通徴収に基づき自分で納めることとなります。
住民税は、年間の所得に関わらず定額で課される均等割、所得に応じて決定される所得割の2つの計算に基づき金額が決定されます。
所得割の計算方法は、市区町村民税の場合、課税額×6%、都道府県民税の場合、課税額×4%となります。
所得割と均等割から調整控除額を差し引いた額が納めるべき住民税の額です。所得税同様に、収入額ではなくあくまでも所得が基準となります。
所得税と金額及び対象年度が異なりますので、その点について正しく理解しておきましょう。
3,個人事業税
対象業種かつ年間所得が290万円を超えた場合にかかる税金です。法定業種として定められる70業種が対象となっています。フリーランスであっても対象業種に該当する場合がありますので、仕事を始めるにあたって確認しておきましょう。
4,消費税
フリーランスで消費税を納める必要があるのは、売上が1,000万円を超える場合です。開業して2年に満たない場合には、1年前の1月1日~6月30日までの売上が1,000万円を超えている人が対象です。
なお、2023年10月1日からはインボイス制度が開始となります。インボイスへの登録は任意のため、引き続き免税事業者(前々年度の売上が1,000万円以下)として事業を継続する場合は、消費税の納税義務は発生しません。
しかし、免税事業者と仕事をしている課税事業者はインボイス制度の開始によりこれまで出来ていた仕入税額控除が適用されなくなることから、免税対象者との仕事のやり取りにおいて負担増となってしまうのです。
そのため、免税対象者との取引において、消費税分の値下げ要請やそもそもの取引の打ち切りなどの可能性が出てきます。免税対象者であるフリーランスにも実際の仕事の受注に関しては大きく影響を及ぼすものであるということを認識しておきましょう。
5,国民健康保険料・国民年金保険料
会社員のように天引きされることがないため、年金や健康保険に関しても自分で支払う必要があります。
また、会社員のように会社と折半して支払うという制度がないために、自己負担が大きいという注意点が挙げられます。ちなみに国民健康保険や国民年金に「扶養」という概念はありません。
フリーランスの職種別 平均売上比較
フリーランスの平均売上はどの程度でしょうか?職種別(職業別)に相場を提示します。
ITエンジニア
ITエンジニアは比較的稼ぎやすい職種と言われています。インターネット(IoT)の発達やDX化の波もあり、ITエンジニアの需要はこれからも伸びていくでしょう。一方、日本国内の人口減少に伴って労働生産人口は減少していくと見込まれています。そのため、システムエンジニアやプログラマーなどのITエンジニアが非常に重宝され、単価が高くなるのです。
ITエンジニアの中には年間1.000万円以上の売上がある人もいるといわれています。しかし、これはあくまでスキルと実績を一定程度積んだ結果です。未経験からITエンジニアに転向して、いきなり年間売上が1,000万円にはなかなかなりませんので注意して下さい。
ITエンジニアの中にはさまざまな職種があり、ITインフラなどを扱うインフラエンジニアや顧客の要望をシステム的な仕様に落とし込むシステムエンジニアという職種があります。また、データ分析を行うデータサイエンティストという職種もあるのです。
Webデザイナー
WebデザイナーとはWebサイトなど、インターネット上にあるもののデザインをする仕事です。Webサイト全体のデザインはもちろんここと、バナーやロゴなどの製作を担当することもあります。Webデザイナーはたしかに専門知識が必要ですが、ITエンジニアほどの専門性は必要ありません。そのため、年間売上が少ない人は200万円〜300万円程度になることもあるでしょう。
年収を上げていきたいなら、Webだけに拘らず紙媒体のデザインを受注したり、デザインだけでなくイラストも描けるようにしたりと、業務範囲を広げる必要があるかもしれません。
イラストレーター
イラストレーターとは漫画やゲーム、そしてWebサイトなどで使用されるイラストを描く仕事です。一般的にはあまり区別がないかもしれませんが、デザインとイラストは別の仕事です。もちろん両方できるクリエイターもいますが、仕事としては別と考えましょう。イラストレーターの年収は300万円〜500万円程度といわれています。
Webライター
WebライターとはWeb上の文章を執筆する仕事です。一口にWeb上の文章といってもSEO記事やインタービュー記事、それにLP(ランディングページ)など多くの種類の仕事があります。記事の種類や難易度、それに予算の都合で単価は異なってきますが、年間売上はおおむね300万円〜400万円といわれています。
しかし、WebライターもITエンジニアと同様に稼ぐ人は稼いでいます。年間売上1,000万円を超えるようなライターもいるといわれています。
映像制作
映像制作とは、簡単に言えば動画を作る仕事です。テレビ番組や映画など、広い意味の映像は昔からありましたが、YouTubeの台頭、自治体や企業のプロモーション動画が一般的になったことにより、フリーランスの職種としてオーソドックスなものとなりました。もちろん業種からの参入(独立)した人もいますが、もともとテレビ局などに勤務していた人が独立したパターンもあるようです。
映像制作の年間売上は180万円〜360万円といわれています。しかし、中には1本数十万円もするようなプロジェクトもあります。そのような案件を受注できれば、より高い売上を上げることも可能でしょう。
Webマーケター
WebマーケターとはWeb上のマーケティングをするのが仕事です。顧客ニーズを知るための市場調査やその分析、分析にもとづく商品・サービスの仕様検討や提案など、事業の根幹をなす仕事の一つと考えられています。
Webマーケターの年間売上は300万円〜400万円といわれています。しかし、経営の基本的な部分に触れる仕事でもあることから、1件数十万円の案件もあるようです。このような案件を継続的に受注できれば、より高い売上を上げることも可能でしょう。
フォトグラファー
フォトグラファーとはいわゆるカメラマンのことです。フォトグラファーは特にスキルがものという世界ですが、必要なのは撮影スキルだけではありません。被写体(お客さん)の笑顔を引き出す会話力や、お客さんの希望に耳を傾ける傾聴力も必要なのです。
フォトグラファーの年間売上は300万円〜400万円といわれています。しかし、フォトグラファーの中でも専門性が必要な水中カメラマンや報道カメラマンの仕事を受注できれば、より高い売上を見込めるでしょう。
コンサル
一口にコンサルといってもさまざまな職種にわかれています。事業戦略を立てたり、既存業務を改善したり、財政面を強化したりと経営の根幹に関わる重要で責任の大きな仕事です。そのため売上も高い傾向にあり、月間売上が100万円〜200万円程度といわれています。年間売上は1,200万円〜2,400万円程度になります。
企業の経営にかかわることなので、失敗は許されません。その責任の重さが単価の高さにあらわれているのです。コンサルとして働くには一定程度の経験や知識が必要となります。これから異業種でフリーランスになろうとしている人が「単価が高いから」という理由でこなせる仕事ではありませんので、注意して下さい。
売上をアップさせるために必要なこと
フリーランスになる人は、誰もが高い売上を達成したいと思っているでしょう。そのための方法を解説します。
はじめはとにかく量をこなす
はじめはとにかく業務量をこなしましょう。そのためには、必要以上に案件を選り好みしない、依頼された案件は極力断らないことが大切です。あるいはクラウドソーシングサイトやエージェントサービスを利用して、とにかく案件を獲得しましょう。
量をこなすメリットは3つあります。
1つ目は量をこなすことで業務スピートが上がり効率的に稼げるようになることです。効率的に稼げば多少単価が安くても一定程度は稼げるでしょう。単価の安さを稼げない理由にしてはけません。
2つ目は量をこなすうちに見えてくるものがあることです。量をこなすということは、それだけ失敗することも多いでしょう。人間は失敗する中で実際に痛い目にあるからこそ、改善できるものです。たくさん失敗してその度に改善して、どんどん仕事の質を上げていきましょう。また、さまざまな業界の事情を知ることもできます。そういった情報もフリーランスとしての仕事の幅を広げるでしょう。
3つ目は信頼が貯まることです。依頼された仕事を断らずにこなしていると、「あいつに頼めばどうにかなるかもしれない」という印象をクライアントに与えることになります。そうなれば、黙っていても仕事が入ってくる状態になるのです。
しかし、業務量が一定以上増えていくと、納期や他の案件の都合上どうしても断らなければならない状況になるでしょう。仕事を断るのは、自分の限界をはるかに超えそうなときだけにしましょう。
税金関係の知識を身につける
売上を上げると同時に大切なことが、手元からお金を流出させないことです。この話をすると「無駄な経費を使わない」ということにもなりますが、ここでは税金関係の話をします。
フリーランス(自営業)は、会社員と異なり経費計上が認められています。事業に必要な商品やサービスの代金を経費計上することで、課税所得を減らして節税できるのです。つまり、すでに使ったお金のうち、経費に計上できるものを漏れなく確認することで手元に残せるお金が増えるのです。
控除も同様です。控除には多くの種類がありますが、どの控除が適用されてるのか、自分で調べないと誰も教えてくれません。また、確定申告時も勝手に控除計算してくれるわけではなく、自分で適用される控除を確認して計算しなくてはならないのです。
このように税金関係の知識があるのとないのとでは、手元に残るお金がまったく異なってきます。控除をうまく利用してい所得をゼロにすれば、所得税の支払いが不要になるだけでなく、住民税非課税、国民健康保険料の大幅減額(所得割がゼロ)、国民年金の一部または全部の免除などが適用されます。
まとめ
以上、フリーランスとして生計を立てていくためにはどのくらいの稼ぎが必要なのか、具体的な生活モデルを挙げてご紹介しました。
フリーランスの仕事量には波があることから、なかなか毎月の収入を安定させるということが難しいかもしれませんが、おおよその月収目安を把握しておくことで、多少の増減があっても長期的に収入と支出を安定させていくことが出来るようになるでしょう。もしそれができなければ、転職(会社員として再就職)の必要が出てくるかもしれません。
特に、自分で納めるべき税金などはあらかじめ把握しておかなければ想定外の出費に焦ることになりかねません。今回お伝えしたことをぜひ参考にしてみてください。
投稿者プロフィール
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初めまして、私はフリーランスのエンジニアとして10年以上の経験を持っております。専門分野はウェブ開発とモバイルアプリケーションの設計・開発です。これまでに、多様な業界のクライアントに対して、使いやすく革新的なソリューションを提供してきました。特に、React、Angular、Node.jsを用いた高度なSPA(Single Page Application)の開発には自信があります。
また、モバイルアプリ開発では、iOSとAndroidの両プラットフォームに対応したアプリケーションを数多く手掛けてきました。クライアントのビジネスニーズに合わせたカスタムソリューションの提供を得意としており、ユーザー体験を最優先に考えたアプリ設計を心掛けています。
フリーランスとしてのキャリアを通じて、様々なチームと協力し、リモートワークにも柔軟に対応してきました。コミュニケーション能力とタイムマネジメントは自分の強みであり、クライアントとの良好な関係構築を常に意識しています。新しいプロジェクトに対する情熱と、常に技術の最前線にいることへの意欲が私のモットーです。
どのようなプロジェクトも積極的に受ける姿勢で、新たな挑戦を楽しみにしています。ご連絡をお待ちしております。
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