通訳者フリーランスの仕事とは?在宅でもOK?スキルと年収も解説

How

「観光地で英語を使って日本の良さを伝えたい」

「国際会議で外国の方が話す内容を同時通訳したい」

世界にはさまざまな言語があり、そのすべてを理解している人はいません。そのため、聴く人が分かる言語に訳す必要があります。通訳は言葉の壁を越える大切な仕事なのです。

今回の記事ではフリーランスの通訳として活躍するためのスキルや年収、そしてメリット・デメリットを紹介しています。フリーランスの通訳になりたい方や、単価アップを目指したい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

通訳でフリーランスになれる?

通訳と聞くとどこかの会社、あるいは組織に属してチームで仕事をするイメージを持つ方もいるでしょう。通訳でフリーランスになれるのでしょうか?

通訳の種類

まずは通訳の種類について知っておきましょう。よく比較される翻訳者との違いは、口頭で訳すこととリアルタイム性が要求されることです。

例えば、これから説明する通訳の種類をコース別にして特徴をわかりやすく説明し、目的や通訳以外にかかる費用などを明確にしておくことが重要です。

同時通訳

聴きながら同時に通訳をアウトプットするスピード重視の通訳です。高度な技術が必要なのもさることながら、かなりの集中力が必要なので複数人体制で交代しながら担当することが多いです。

現場では防音ブースに入り、イヤホンで話者の声を聴き、マイクを通して通訳を伝えます。聞き手はレシーバーなどで通訳結果を聴きます。このように機材が必要になるのが一般的ですが、最近では同時通訳システムが増えつつあり、スマホで通訳を聴くこともできます。

利用シーンは国際会議、講演会、株主総会などです。

逐次通訳(会話後通訳)

話者が区切りの良いところまで話したら通訳するやり方です。話者との連携が必要になってきます。話者→通訳→話者→通訳…の順なので時間はおよそ2倍かかることになりますが、スピードよりも確度の高い通訳を求められる場合に有効な通訳です。

利用シーンはインタビュー、セミナー、小規模会議、契約・商談などです。

アテンド(同行通訳)

話者に同行しながら通訳します。話者が移動を必要としている現場で役に立ちます。厳粛な環境ではない反面、話者とのコミュニケーションがより重要となります。特に観光の場合は、観光ガイドも自分でこなしながら通訳ができるサービスだと需要が高いでしょう。円安傾向であればインバウンドにより日本国内での需要も増えることになります。ただし移動手段にかかる費用は別途請求する必要があります。

利用シーンは観光、食事、買い物、空港、見学などです。

ウィスパリング(耳打ち通訳)

話者のそばで耳打ちするように通訳するやり方です。通訳を必要とする人が少ない場で効率的に通訳できるのが特徴です。例えば一人だけ日本語がわからない人がいる場合はその人にだけ通訳をつけるといった具合です。これも同時通訳の一種であり、高度な技術が必要ですが、発言する場合は逐次通訳を併用しながら通訳できます。

利用シーンはインタビュー、小規模会議などです。

通訳者フリーランスの需要はある

例えば企業に所属していても、常に通訳が必要なケースは限られるため、スポット的に通訳者を利用することが多いのが実情です。したがって逆に言えば、この点はスポットが得意でフットワークの軽いフリーランスにとって大いにチャンスがあると言えます。

ただし、クライアント側も自力で通訳者を探すということはあまりしないため、最初から個人で営業するのは避けたほうがよいでしょう。特別なツテがない限り、多くの場合は案件が取れずに失敗する可能性があります。

また、インターネットを通じオンライン通訳も対応できるようにしておくと今の時代にマッチします。コロナ禍以降、web会議やオンライン講演会が急増しました。通訳者の移動時間が削減できるため、クライアントにとって費用面の負担が軽減され、通訳者にとって時間の有効活用ができる点がメリットです。

以上より、通訳者フリーランスとして活躍できる場はあると言えます。

通訳者フリーランスのポイント

イメージ共有

クライアントから依頼された際に「通訳者は人前に出ていいのか」「ブースでやるのか」「インカム経由なのか」「どのような相手に向けて伝えるのか」などを綿密に相談しておくことが重要です。あくまでもクライアントファーストであり、クライアントの希望イメージを共有しておきましょう。

知見の習得

事前に通訳する分野の資料を共有し、よりスマートな通訳をしましょう。専門分野になればそれなりの資料を読み込んで知見を習得する必要があり、通訳内容が間違った解釈で伝わるのを防がなければなりません。加えて、担当した分野における海外の最新情報なども吸収しておくとよいでしょう。

連絡

連絡は「こまめに、速やかに」が基本です。トラブル時の緊急連絡など、現場での対応力の良さが次回の案件へ繋がります。クライアント側は一度お願いした通訳者に再度お願いするケースが多く、ツテが大変重要な職種と言えます。

通訳の仕事を受注するのに必要なスキル

通訳の仕事をするには次のようなスキルが必要になります。

  • 最新情報をキャッチする力
  • 体調を管理する力
  • 柔軟に会話する力

最新情報をキャッチする力

情報収集能力やリサーチ力といってもいいかもしれません。通訳の案件ごとに業種・職種の情報は日々飛び交っています。業界の情報はもちろんのこと、経済、地球環境など新聞やニュースで発信されているような内容はおさえておく必要があります。

通訳の仕事は単純に言語を訳すだけだと思われがちです。しかし、ベースには業界の環境や国内外の情勢を知っている必要があるのです。

体調を管理する能力

通訳の仕事は翻訳とは違い、決められた時間に決められた場所に行く必要があります。体調が良くないと思うように仕事ができません。もちろん一度受注した仕事を体調不良という理由で断るのも難しいものです。また、「体調が悪くても仕事はできる」と無理をした場合、たとえば旅行ガイドの仕事をしたときにお客さんに風邪をうつしてそのまま本国まで持ち帰らせてしまうリスクもあります。後々無用なトラブルを避けるためにも、日頃から万全の体調でいることを心がけましょう。

柔軟に会話する力

いわゆるコミュニケーション力と呼ばれるものです。「コミュニケーション力が高い人」と聞くと「よく喋る人」と思う方もいるかもしれませんが、決してそのような意味ではありません。打ち合わせや現場でクライアントの要望を聞いたり、話す人の意図を汲み取ったりする傾聴力が必要となります。

また、ただ話を聴くだけでは何も解決しません。相手の要望に応えられるスキルも大切なのです。この力は通訳という仕事に限らず必要な力です。

通訳者フリーランスの平均収入は?

通訳者フリーランス平均的な収入はどの程度なのでしょうか?

経験年数やスキルでわけると、一つの仕事(1日)の料金は表1のようになります(※1)。

表1.通訳者の労務費

クラス一般的な価格帯/日備考
Sクラス8万円〜12万円【経験15年以上】 医療・金融・ITなど、 専門分野に精通
Aクラス5万円〜8万円【経験10年以上】 分野を問わず 的確な通訳が可能
Bクラス3万円〜6万円経験5年以上】 一般的なビジネス知識があり、 同時通訳にも対応
Cクラス2万円〜5万円【経験3年以上】 日常会話レベルの 逐次通訳が中心

表1.はあくまでも通訳にかかるすべての労務費です。この労務費をもとに次の条件で年収を計算します。

  • 通訳者フリーランスへの支払いは労務費の60%
  • 月間20日✕12か月労働

一つ目の条件を適用すると、各クラスの1日の報酬は次のようになります。

  • Sクラス:5万円〜7万円
  • Aクラス:3万円〜5万円
  • Bクラス:2万円〜4万円
  • Cクラス:1万円〜3万円

そして、二つ目の条件を適用すると、各クラスの年収は次のようになります。

  • Sクラス:1,200万円〜1,700万円
  • Aクラス:   700万円〜1,200万円
  • Bクラス:   500万円〜1,000万円
  • Cクラス:   250万円〜   700万円

ステップアップして専門性をあげるもいいですが、最低限の生活であればBクラスやCクラスの単価でもできるかもしれません。

メディアでよく見かけるクラブチームや選手一人を担当する専属のスポーツ通訳では、大きなクラブチームになれば年収が1,000万円を超えることもありますが、平均して400〜600万円を推移します。平均年収351万円(※2)というデータもあるため、決して簡単に稼げる仕事ではありません。

(※1)アイミツ「通訳会社の平均費用と料金相場|早見表つき【2024年最新版】
(※2)doda「平均年収ランキング

通訳者フリーランスのメリット・デメリット

通訳者フリーランスのメリットとデメリットは何でしょうか?

メリット

仕事を選べる

好きなクライアントの好きな案件に応募できることです。会社員だと管理職が仕事の割り振りをするため、自分で仕事を選べません。しかし、フリーランスであれば好きな仕事を獲得すれば、スケジュールを自分の好きな仕事で埋めることもできます。

通勤概念がほぼない

毎日決まった時間に決まった場所に通勤する必要がないことです。会社員であれば通訳の仕事がない日でも所属する会社のオフィスへ行かなければなりません。しかし、通訳者フリーランスなら通訳をするときに現場へ行く必要はあるものの、その他の作業は自宅など好きな場所でできます。通勤の必要もないため、時間を有効に使えます。もちろん社内の煩わしい人間関係に悩むこともありません。

収入はスキル次第

自分次第で収入は青天井であることです。会社員であれば会社の評価制度とそれに則った給与体系があり、急に下がることもなければ急に上がることもありません。しかし、通訳者フリーランスなら自分の頑張り次第で単価を上げたり、労働時間を増やすこともできます。

デメリット

長期戦になりやすい

稼げるようになるまで時間がかかることです。はじめの頃はなかなか案件が獲得できなかったり、獲得できても単価が安かったりするでしょう。

収入が途絶えるリスク

仕事ができなくなると収入がなくなることです。フリーランスは体が資本です。会社員のように「年次休暇」はありません。しかも、体調不良が理由でも突発で仕事をキャンセルすれば、信用問題にかかわるでしょう。

休日概念がない

捉え方によってはメリットになるかもしれません。フリーランスは、いつ働くかもいつ休むかも本人の自由です。そのため、自分の中で休日を設定しないといつまでも休めません。稼ぎたくて休むことなく仕事をしていると、急に体調を崩すこともあります。自ら休日を設定し、適宜リフレッシュするようにしましょう。

通訳におすすめの言語は?

通訳が訳す言語はさまざまです。ここでは修得するのにおすすめの言語を4つ紹介します。

英語

英語は今も昔も世界で最も使用されているエリアの広い言語です。外国語=英語というイメージは一昔前ほどではありません。しかし、今日でも世界の共通言語として通用するのは間違いないでしょう。

中国語

中国語は英語に次いで世界的に有名な言語。中国語を使用するのは中国本土に加えて台湾やシンガポールなど約13億人もいるのです。中国は一時期ほどの経済成長の勢いはありませんが、それでも人口が多く世界の中で経済的に影響力の大きい国であるのは間違いないでしょう。

フランス語

フランス語はフランス本国以外にもアフリカや東南アジアでも使用されており、使用されているエリアの広さは英語に次ぐレベル。そのため、修得すれば広い範囲で通訳の仕事ができるのです。

韓国語

数ある言語の中で日本語と文章構成が同じで、さらに母音と子音の関係も同じです。厳密に言えば日本語より発音が細かく分かれていますが、似たような響きの言葉も多く同時通訳がしやすい言語のひとつと言えます。

通訳者フリーランスになる手順

ベーススキル

一般企業に就職してキャリアを積むのもよいでしょう。しかし、人材育成にどれだけお金をかけられるかはその企業によります。通訳はほとんどの場合、実績を問われるため未経験だと即戦力としての人材採用は不可能と思っておいたほうがよいでしょう。

したがって多くは、外国語に関する大学や専門学校でベースとなる語学力を身に着けます。その後通訳者の養成スクールで実務を学びます。

企業に就職した後、副業でも構わないので個人で仕事を受注できればフリーランスになれる可能性が出てきます。副業にはクラウドソーシングサイトやエージェントで案件を受注して実績を積むやり方があります。

案件獲得のために

ずっとクラウドソーシングサービスや一般的なエージェントサービスを使っていてもなかなか収入がアップしないのが現実です。実は通訳が特殊な職種のため、プロの通訳者フリーランスを目指すためには通訳専門のエージェントや人材派遣での通訳経験を積むほうが案件獲得もスキルアップも速いです。他にも通訳コーディネーターサービスがあります。通訳コーディネーターはクライアントと通訳者を仲介し、スケジューリング、資料作成、要件整理などをサポートしてくれます。

通訳で必要なツール

通訳の手助けとなるツールは利便性の高いものを探しておきましょう。必ずしも高価なものが必要なわけではありません。

タイマー

複数人体制で通訳を行う際に、交代時間を管理するために使用します。もちろん、通訳中は音を出すわけにはいきません。したがって視覚的や触覚的にはっきりと通知がわかる機能を持ったものを選びましょう。例えば、強い点滅、バイブレーションなどがあります。

イヤホン

いわば情報源の命綱です。一番優先しなければならないのはフィット感と疲れないものを選ぶことです。今や高性能のイヤホンがたくさんあります。ノイズキャンセル能力に優れたもののほうが望ましいですが、それよりも外の音をなるべく入れないことのほうが重要なのです。耳かけタイプは意外と疲れず外れにくいですし、インナーイヤー型よりカナル型のほうが密閉性が高いと言えます。

ペン

速乾性が高く、インクの量が見てすぐにわかるものが良いでしょう。話が途切れる時間は話者やその場の流れにより、通訳者には予測がしづらいです。すぐに交換できるように予備は必須ですね。

ノート

大きいサイズと小さいサイズの両方を持っておくとよいでしょう。場所に余裕があれば大きいサイズのほうがストレスなく書けます。移動を伴う通訳の場合は小さいサイズが良いですが、メモ用紙をバインダーに挟めば安定性は向上します。

通訳者フリーランスとしての注意点

以下は基本的なことではあるものの、場合によっては致命的になりかねないことをいくつか挙げてみました。

機材・通信不良

例えばオンライン通訳でよくあるケースです。話者や通訳者の声が聞き取れず、正しく情報が伝わらないまま終了し、クレームになった上、信用を失ってしまいます。

マイクやイヤホンの調子が悪いことも、インターネット環境が悪いことも考えられます。話者の声が聞き取れるか、自分の声がきれいに聞き取ってもらえているかを事前に念入りに確認しましょう。たとえ機材・通信不良の原因が自分以外の参加者であったとしても、はっきりと指摘しましょう。

現場で資料の忘れ物

仮に現場に置き忘れた資料が守秘義務範囲内のものであったらどうでしょう。守秘義務はクライアントとの信用生命線です。ご自身が致命的になるのもさることながら、何よりもクライアントが損害を最も受ける可能性があります。現場での確認を怠ってはなりません。

喉への配慮不足

どれだけ正確な通訳をしても声が届かなければ意味がありません。代えのきく会社員とは異なり、身ひとつのフリーランスにとって健康管理は重要な仕事のうちの一つです。特に通訳の場合、クライアントがピンポイントでスケジュールを調整していますから、成果物を上げる仕事と違い「今回はもう少し延期させてほしい」「今回は他の人を当てます」ということがほぼできません。喉の調子は日々確認しておきましょう。

まとめ

この記事では通訳者フリーランスとして活躍するためのスキルと年収、そしてメリットやデメリットを紹介しました。

通訳は他のフリーランスと職種と違い非常に専門性が高く、オンライン以外では現場に足を運ぶ必要があるため在宅のみではこなせない特殊な仕事です。未経験からはじめるにはハードルが高いかもしれません。しかし、思い切ってチャレンジした先にはあなたが思い描く未来が待っています。

その未来を掴めるかはあなた次第。この記事を参考に、ぜひ通訳者フリーランスにチャレンジしてみてください。

投稿者プロフィール

廣石健悟
廣石健悟
12年の会社員経験(メーカーの機械設計など)を経てフリーライターになりました。会社員の良さ、フリーランスの良さそれぞれを実際に体験しています。記事執筆の他にインタビュー、取材(写真撮影含む)もできます。

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