翻訳家フリーランスとして仕事がしたいけど求人はあるの?年収や必要なスキルについて解説

How

「自宅にいながら翻訳の仕事がしたい」

「会社に縛られず、複数のクライアントの翻訳の仕事がしたい」

英語が得意な方、あるいはこれまで翻訳の仕事をしてきた方の中には、このように思う方もいるでしょう。

この記事ではまず、翻訳家としての仕事イメージをつけてもらうために翻訳の仕事や需要について、次にフリーランス翻訳家の年収や、年収アップの方法、そして初心者からフリーランス翻訳家になる方法を解説しています。

フリーランスの翻訳家として仕事をしていても年収が上がらず悩んでいる方や、初心者からフリーランスの翻訳家になりたいがどうしていいか分からず困っている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

フリーランスでも翻訳の仕事はできる?

翻訳の仕事はかつて、会社員や派遣社員など何らかの形で組織に属して行う仕事でした。そもそもフリーランスが翻訳家になれるのでしょうか?結論からいいますと、フリーランスでも翻訳家になれます。

翻訳と通訳の違い

よく比較される通訳者との違いは、口頭ではなく文面を訳すことです。通訳のようにリアルタイム性は要求されないものの、正確性がより要求されるお仕事です。

とはいえ、その分野についてはある程度気をつけていないと正しく訳せないでしょう。

また、目に見える成果物が報酬の対価であり、当然納期に追われることもありえます。

翻訳家フリーランスの需要はある

文面を相手にしているため在宅でできることが多く、数ある職種の中でもフルリモートに最も近いお仕事のうちのひとつです。

フリーランス白書2024によると、職種全体では5位、IT系以外では出版メディア、コンサルに次ぐ3位で人気の高い仕事となっています。さらにフリーランス白書2023では、年収は400万円未満が約60%、400万円以上が約40%となっています。

また、インボイス登録申請割合はコンサル、エンジニア系に次ぐ全体3位です。

平均収入だけで見ると中間レベルではありますが、インボイス登録申請の割合が多いということは比較的稼げている人が多いとも言えます。

以上のことより、諸々割合が多いということはライバルも多いことになりますが、需要もそれだけあり、活況ということです。

言語の需要で言うと、英語が全体の約8〜9割を占め、英日翻訳および日英翻訳はマストになるでしょう。アジア圏では中国語がトップです。

翻訳家フリーランスの今後とポイント

AI翻訳が話題に上がることが多くなってきました。そこで考えるのが翻訳の仕事がAIに奪われるのではないかという心配です。確かにAIも訳の精度が年々向上していますが、人が翻訳する上で必要なのは、ターゲットである読み手の国の文化に合わせて訳語をわかりやすく置き換えることです。この部分はAIでもさすがに難しいです。AIはいわば直訳はできるかもしれませんが、読み手の感性や文化に合わせた翻訳はできません。したがって依頼を受けた際は、自分に翻訳を依頼してもらうことでクライアントが得られるメリットを存分にアピールすることがポイントになります。

フリーランスの翻訳家に必要なスキルは?

次の三つのスキルが必要になります。

  • 外国語を使いこなす語学力
  • 業界や業種の専門知識と技術
  • 日本語と外国語の違いを理解する力

外国語を使いこなす語学力

例えば英語なら、TOEICやTOEFLの点数が高いことも重要ですが、エージェントに登録する前にテストを受ける場合もあります。当然、そのテストに合格しないと翻訳者としての仕事はできません。

文の構造を正しく理解する力や、単語の知識(ボキャブラリー)、それに表現の知識も必要なため、仕事の有無に関係なく普段から外国語を学習する必要があります。

業界や業種の専門知識と技術

ビジネスに関する文書を翻訳する場合、その業界や業種の知識も必要になります。

例えば、あなたが未経験の業種・職種に転職したとします。はじめは業務についていけないばかりか、周囲の人が話す言葉の意味すらわからないでしょう。そのため、翻訳の仕事ではその業種・職種の基礎的な知識も必要となります。

また、映像翻訳や書籍の翻訳の場合はその国の文化的背景の知識も必要となります。

例えば、アメリカでハグはある程度親密な関係(日本の恋人のような関係ではない)にある人同士で行うものですが、そのような文化を知らなければ「なぜ友人同士でハグするのか?」と疑問に思うでしょう。

そのような疑問を抱えたまま翻訳しても、ぎこちない直訳のような表現しかできないかもしれません。

日本語と外国語の違いを理解する力

例えば、英語では文法の関係上必ず主語を文頭に書きます。しかし、日本語の場合は主語の位置が変わったり、主語が分かりきっている場合などは省略することもあります。

このため、英文を直訳したのでは、毎回主語が文頭に書かれた日本語の文章となり、煩わしく感じるでしょう。直訳ではなくほぼ必ず意訳が必要になるといってもいいでしょう。

フリーランス翻訳家の年収は?

それではフリーランス翻訳家の年収はどのくらいなのでしょうか?

日本翻訳連盟が行った調査結果(2022年度翻訳通訳白書)によると、次のような結果でした。

  • ボリュームゾーンは年収300万円以上〜400万円未満(17.9%)
  • 年収200万円以上〜500万円未満の回答者が約60%を占める
  • 年収100万円未満(11.1%)と、同1,000万円以上(6.0%)も無視できない数字

調査によると年収200万円以上〜500万円未満の方が最も多い一方で、同100万円未満の方や1,000万円以上の方もいて、年収には開きがあります。

また、通訳・翻訳ジャーナルが行ったここ数年の調査では平均年収の大きな変化はなく、フリーランス翻訳家全体の平均年収は400万円〜500万円の範囲に収まるでしょう。

フリーランス翻訳家にお勧めのジャンルは?

翻訳家と一口に言っても、さまざまなジャンルがあります。

  • 産業翻訳(実務翻訳)
  • 映像翻訳
  • 出版翻訳

一つずつ解説していきます。

産業翻訳(実務翻訳)

ビジネス文書や契約書を翻訳する仕事です。昨今のビジネスのグローバル化が進むにつれ、翻訳の仕事の需要も多くなっている状況です。しかし、ビジネス文書の翻訳であるため、前述のように業界・業種の専門知識やもちろんのこと、その国の労働習慣や商習慣の知識も必要です。

日本翻訳連盟(2022年度翻訳通訳白書)によると産業翻訳をする翻訳家は全体の約80%、通訳・翻訳ジャーナルによると産業翻訳者の平均年収は500万円前後とのことです。

ちなみに産業翻訳の仕事の報酬は「ワード単価✕執筆(翻訳)ワード数」(日本語の場合は文字数)で決まります。

分野によっても翻訳料が異なりますので、以下に翻訳料金の目安を載せますので参考にしてください。

文書の種類/分野英日翻訳(*1)日英翻訳(*2)
コンピューターマニュアル28円20円
一般科学・工学技術28円21円
金融30円25円
経営管理・財務・契約書30円25円
医学・医療・薬学35円30円
特許明細書26円30円

引用:日本翻訳連盟「翻訳料金の目安」より

(*1)英語1ワードあたりの価格

(*2)和文原稿1文字あたりの価格

映像翻訳

映像翻訳の報酬はメディアの種類(映画、テレビ、DVDなど)によらず10分単位の単価が決められてます。(通訳・翻訳ジャーナルより引用)

  • 衛星放送の情報番組の字幕やボイスオーバー:9,500円〜15,500円/10分程度
  • 映画の字幕や吹替:12,000円〜28,000円/10分程度
  • DVD・ビデオの字幕や吹替:11,000円〜16,000円/10分程度。

ちなみにボイスオーバーとは主音声(英語)の音量を小さくして、副音声(日本語)がしっかり聞き取れるようにする手法です。

基本的には10,000円/10分程度の案件が多く、60分の映像を翻訳するには約5日かかるといわれています。一か月の稼働日数を20日だとすると月収24万円、つまり年収288万円となります。

初期投資が必要な専用の翻訳ツールを使用する場合もありますが、最近ではブラウザ上で使用できる動画制作システムを利用し、初期投資を抑えて翻訳のお仕事をすることが可能になっています。フリーランスの経験や実績によって価格が変動しますが、逆に捉えれば経験が浅くても案件の間口が多めな翻訳と言えるでしょう。

出版翻訳

出版翻訳とは海外の書籍を日本語に翻訳したり、海外で出版する日本の書籍を英語に翻訳したりする仕事です。出版翻訳では内容の理解や文化的背景、同シリーズの翻訳のニュアンス(トンマナ)も大切になっていきます。

仕事の報酬は印税方式でもらう場合と、買い取り方式でもらう場合があります。

印税方式では「書籍の単価✕印刷冊数✕印税率」で計算されるため、書籍の単価が高ければ高いほど、印刷冊数が多ければ多いほど報酬が高くなります。

買い取り方式では400字詰め原稿の単価や、書籍1冊あたりの単価が決められています。

出版業界では1冊の単価は約100万円といわれています。一方、イカロス出版が行った出版翻訳者アンケートによると年間の平均出版冊数は3〜4冊。単純計算で翻訳者の年収は300万円〜400万円と推定できます。

ただし、現実的には出版翻訳の需要は少なめです。理由としては、ベテラン勢が多く活躍しており、経験が少ない人には仕事が回ってこない可能性が高いからです。特に印税方式で収入を得ている人の中に入るには壁が高いと言えます。

フリーランス翻訳家の年収を上げるには?

仕事をするならできるだけ高い報酬を得たいもの。フリーランス翻訳家の年収を上げるには、どのようにすればよいのでしょうか?

ワード単価を上げる

翻訳の報酬は「ワード単価✕執筆(翻訳)ワード数」で決まっていることが多くあります。そのため、ワード単価を上げれば今までと同じ仕事量でも年収が上がります。しかし、近年は機械翻訳が増えてきており、単価は下がる傾向にあるようです。

稼働時間を増やす

ワード単価を上げられないなら、稼働時間を増やす(仕事量を増やす)のも一つの方法です。

日本翻訳連盟によると翻訳者の約半数の1日あたりの稼働時間は7時間未満という調査結果となっています。一般的な民間企業の就業時間(定時)でも約8時間はあるため、これより稼働時間が短い場合には稼働時間を増やす努力をしましょう。

【初心者必見】フリーランス翻訳家のなり方は?

翻訳経験はないものの、ある程度英語に精通している方はいきなり案件を受注しても良いかもしれません。はじめての案件受注にはクラウドソーシングサイトが向いていますが、自信があればエージェントに登録しても良いでしょう。

英語そのものに対しても初心者の場合はオンラインの翻訳スクールなどで勉強して、基本的知識を修得しましょう。

翻訳専門の養成スクール

英語そのものに対しても初心者の場合はオンラインの翻訳スクールなどで勉強して、基本的知識を修得しましょう。養成スクールによっては実務翻訳、映像翻訳、出版翻訳それぞれに特化したものもありますし、全体的にバランスよく学べるスクールもあります。

単に外国語専門学校に通う方法もありますが、翻訳家を目指すことが明確ならば、翻訳専門のスクールに通うことをおすすめします。翻訳家に必要なことを効率よくサポートしてくれるからです。

クラウドソーシングやエージェントサービス

基本これらのサービスは無料で利用できます。

クラウドソーシングでは小さい案件から大きい案件まで多くの翻訳に関する仕事を募集をしています。クラウドソーシングは単発で仕事を受けたい人、実績をとにかく積みたい人にはもってこいのサービスです。報酬から手数料としておよそ10~15%がかかることが多いです。手軽に応募できるメリットはありますが、自分で選ぶ必要があり、基本募集要項に書かれていること以外は情報が得られない状態で応募しなければなりません。中には報酬単価が相場よりも低い案件もあるので慎重に吟味しましょう。

一方、翻訳専門のエージェントを利用すると、サポートが手厚く、自分にあった求人募集を優先的に紹介してくれるので案件獲得に有利にはたらきます。掲載されている求人だけでなく非公開求人を募集していることもあるのが大きなメリットのひとつです。ただし、エージェントは基本的にキャリア採用であり、未経験案件は当然少なめです。実績があるかつ即戦力となるスキルならばエージェントとしてもクライアントに交渉しやすいので、スキルをある程度お持ちならエージェントをおすすめします。

翻訳会社に登録

翻訳専門の企業が存在します。エージェントのように仲介することなく直接仕事を請け負うことができます。求人媒体ではなく自社のwebサイトに求人情報を掲載していることもあります。複数の翻訳会社に登録することをおすすめします。

フリーランス翻訳家で活動する際の注意点

文書を相手にしている翻訳家であっても注意すべき点がありますので、それらを説明します。

契約書を交わす

成果物ありきの翻訳家です。依頼は口頭で受けずに契約書を必ず交わしておきましょう。

契約書には契約期間、納期、報酬、修正、アフターケア等、後々トラブルにならないようにするための重要事項が記載されます。クライアントとフリーランスがお互いに気持ちよく終われるようにしたいものです。

損害賠償に備える

万一翻訳等にミスがあり、顧客に重大な損害を被ってしまった場合に備える翻訳事業者専門職務賠償責任保険制度があります。保険は必須ではありません。しかしながら、医療・技術系等の専門分野になればなるほど、まだ世の中に出ていないレポートや研究開発内容の資料を翻訳することもあるでしょう。そういった専門分野は報酬が高めな分、責任も重くなります。したがって、翻訳家が少しでも安心して業務に専念できるようにするために検討は必要でしょう。

経理関連をこなす

経理専門の人を雇わない限り、収支管理、確定申告は自分で行う必要があります。最近ではweb上で確定申告ができたり、簡単に財務諸表を作成できるツールがあったり、フリーランスにとって働きやすい環境が整ってきました。本業に専念するのもよいですが、経理関連も怠ってはいけませんね。

まとめ

この記事ではフリーランス翻訳家の仕事内容、年収や報酬イメージ、また初心者からフリーランス翻訳家になるために必要なスキルや道筋を解説しました。

好きなときに好きな場所で好きな翻訳の仕事ができるのは、フリーランス翻訳家の特権です。また、世界共通言語の英語なら、グローバルに働くことも可能です。

フリーランス翻訳家として仕事をしたいけど迷っているなら、この記事を参考にして是非、AIに負けない人間味のある翻訳家での活躍を目指してみてはいかがでしょうか?

投稿者プロフィール

廣石健悟
廣石健悟
12年の会社員経験(メーカーの機械設計など)を経てフリーライターになりました。会社員の良さ、フリーランスの良さそれぞれを実際に体験しています。記事執筆の他にインタビュー、取材(写真撮影含む)もできます。

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