フリーランスは老後が不安?資金の貯め方と無職になることに躊躇する理由を教えます

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フリーランスは会社員と比べると不安定という印象をお持ちの方もいらっしゃると思います。
実際に、フリーランスの報酬は会社員のように月給制がなく、働いた分成果を出した分が収入に反映されるという形になっています。
仕事量や収入額が一定でないということがその一因になっているでしょう。
また、それと同様に、受け取る公的年金が少ないということも理由に挙げられるのではないでしょうか?
今回は、フリーランスと年金についてスポットを当てていきます。
フリーランスの老後はやはり危ういのか?
それを回避するにはどのような方法があるのかについて詳しくお伝えしていきます。

フリーランスの老後は危うい?

老後については不安がつきものですよね。まずは現状理解から進めましょう。

世代別貯蓄額の現状

まず現状を把握するために、年代別貯蓄額を年収のボリュームゾーンに絞って以下にまとめてみました。フリーランスに限っているわけではないので参考データとなりますが、これをご覧になってどう思うかが重要です。

<二人以上世帯>

年代年収ボリュームゾーン貯蓄額平均値貯蓄額中央値
20代500〜750万円201万円70万円
30代556万円200万円
40代833万円310万円
50代997万円400万円
60代300〜500万円1630万円700万円
70代1663万円820万円
総数1307万円330万円

<単身世帯>

年代年収ボリュームゾーン貯蓄額平均値貯蓄額中央値
20代〜300万円83万円5万円
30代326万円14万円
40代206万円0万円
50代472万円5万円
60代1129万円162万円
70代1067万円400万円
総数941万円100万円

参考:金融広報中央委員会

   「2023年家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」

   「2023年家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]」を元に作成   

二人以上世帯の場合、老後を目前にした50代でさえ、平均貯蓄額は約1,000万円であるものの、中央値は400万円で平均値と大きな乖離があります。金額は異なりますが、単身世帯でも乖離は発生しています。これが何を意味するかと言うと、ごく少数の富裕層の貯蓄額が極端に多いため平均値を引き上げている、いわば格差が生まれていることを表しています。

意外だったのが単身世帯で、アンケートでは金融資産が少ないから老後を心配している人が7割いることがわかっています。ボリュームゾーンの年収は低めで、貯蓄に回したくても回せていない人が多いのです。また、ここではデータを載せていませんが、単身世帯では年収が750万円、二人以上世帯では年収が1,000万円を超えると貯蓄額が飛躍的にアップしています。

このデータで注意したいのは年収がある人の話です。無職の人は貯蓄ゼロがほとんど、平均貯蓄額も1,000万円には程遠いです。

年金の種類

老後に備えるための手段の一つとして年金がありますが、そもそも年金には公的年金と私的年金の2種類があります。公的年金が、国が管理している年金制度であり、いわば年金の基礎部分と言えます。
一方、私的年金とは、個人で積み立てていく年金です。公的年金を補うためのものであり、任意での加入となります。
今回は、2つの年金のうちの公的年金に注目し、理解を深めていきましょう。

公的年金にも種類があり、「国民年金」と「厚生年金」の2種類があります。これらについては日本年金機構が運営と管理を任されています。

フリーランスの年金

国民年金は、原則20歳以上60歳未満のすべての人が対象である一方、厚生年金は会社員や公務員が加入できる年金です。

結論から申し上げますと、フリーランスの年金受給額は会社員より少なくなります。その理由は年金の構造にあります。年金は以下のように2階建て構造になっています。

年金対象者月額納付金額
2階厚生年金会社員や公務員のみ(第2号被保険者)賃金の18.3%
1階国民年金20歳以上60歳未満の国民全員一律16,980円(*1)

(*1)2024年現在

フリーランスや個人事業主は1階部分の国民年金しか加入できません。

会社員のほうがさらに多く納めていることから受け取れる年金も多くなります。ただし厚生年金は、会社側が半額負担しています。これを労使折半と言います。

補足ですが、日本の年金は賦課(ふか)方式をとっており、現役世代が支払っている年金保険料を財源に、年金受給世代の支給年金に充てる仕組みです。

フリーランスの年金はいくらもらえる?

まず先にお伝えしておくと、フリーランスの場合公的年金のみで生活をしていくのはほぼ不可能でしょう。フリーランスが、20歳から60歳になるまでの間、年金を収めた場合に受け取れる金額は、月額約6万8000円となっています。公的年金のみを当てにするのではなく、老後対策を個々でおこなっていく必要があるのです。

年金受給の注意点

納付は60歳までですが、受け取り開始は65歳からです。もし仕事を続けないのであれば、この空白の5年間は自分の財産から切り崩さなければいけないのは注意したい点です。60歳から先に受給を始める繰り上げ受給も可能ですが、受給額は当初の予定より少なくなります。

減額率=0.4%×繰上げた月数

60歳で繰り上げた場合の減額率=0.4%×12ヶ月×5年=24%

これが最大となり、減額率は65歳以降もずっと適用されてしまうため繰り上げは最終手段としておいたほうがよさそうです。

年金は損しないのか受給額を試算

「会社員のほうがたくさんもらえてお得なのか」

「年金は損するって聞いたことがある」

と疑問が沸くのではないでしょうか。ここでは国民年金と厚生年金の受給額を試算し、どれくらいで元本(総納付額)を上回るのかを検証してみました。

国民年金受給額の試算

国民年金は一律で納付額が決まっていますから、計算がしやすいです。

国民年金の総納付額=16,980円×12ヶ月×40年=815万円

2024年現時点で国民年金受給満額は81.6万円で固定です。以降は年間受給額に変動がないものとして試算します。

年間受給額=81.6万円

損をせず元本以上になるのは、

元本以上になる最低年数=国民年金総支払額816万円/受給満額81.6万円=10年

10年以上必要になる計算です。つまり75歳以上生きてやっとプラスになります。

さらに言うと、国民年金を全期間の40年間フル月数(480ヶ月)分納付したとして、100歳になってやっと利回りが3%行くか行かないかになります。

厚生年金受給額の試算

厚生年金は具体的な例を設定しないと試算ができないため以下のように設定します。

例)・年収が大卒社会人1年目で400万円

  ・年収が年々定額でアップ

  ・60歳で700万円

  ・60歳で退職

この設定ですと生涯平均年収は550万円となります。

厚生年金の総納付額=(550万円×38年間)×18.3%/労使折半2=1,912万円

受給額は年収と支払い期間によって異なりますが、平均年収550万円の厚生年金受給満額は約120万円と言われています。

年間受給額=国民年金受給満額81.6万円+厚生年金受給満額120万円=201.6万円

損をせず元本以上になるのは

元本以上になる最低年数=(国民年金総支払額815万円+厚生年金総支払額1,912万円)/受給満額201.6万円=13.5年

14年以上必要になる計算です。つまり79歳以上生きてやっとプラスになります。

ショッキングなのは一時期話題に上がった老後2,000万円問題も、実は厚生年金を支払わずその分を貯蓄に回すことでほぼ2,000万円に近い資金が60歳到達時点で十分用意できるという点です。

フリーランスの老後対策はどうしたらよい?

続いては、具体的にフリーランスにおすすめしたい老後に向けた対策方法をご紹介していきましょう。やはりポイントは資産形成で、どのようにお金に働いてもらうかを考えてみましょう。

小規模企業共済への加入

小規模企業共済とは、フリーランスや自営業の人向けの積立による退職金制度です。
加入していることで、退職時や廃業時に共済金を受け取ることができます。
また、必要に応じて貸付を受けることもできます。
掛け金が全額所得控除となり、節税効果に繋がるということや将来を見据えて蓄えとして積み立てていくことができます。

iDeCoで積み立てる

掛金が全額所得控除となるiDeCoは、節税をしながら老後資金を積み立てていくことができる個人型確定拠出年金制度です。
自分で掛金を決めて運用していくものであり、月額5000円と少額から始めることができ、投資信託や年金保険等さまざまな商品から選択が可能です。
運用益に関してはすべて非課税であるため、無駄なく老後の資金を貯めていくことができるというのもメリットです。
ただし、あくまでも老後用の資産運用が目的ですので、60歳まで引き出すことができません。途中で資金が必要になったからと言って、切り崩しながら生活するという方法が取れないのがデメリットです。

国民年金基金に加入

国民年金基金は、国民年金の上乗せとしてフリーランスや自営業等の国民年金第一号被保険者が任意で加入可能な制度です。
掛金は全額所得控除であるため、節税効果もあります。
なお、国民年金基金は、一度加入した場合原則脱退することができません。
したがって、加入するかどうかに関しては制度を正しく理解し必要かどうかを確認したうえでおこなう必要があります。

付加年金に加入

付加年金とは、国民年金保険に毎月400円上乗せした保険料を支払うことで、将来の年金額を増やすことができるという制度です。
他の社会保険料と同様に、保険料は全額所得控除となり節税対策にもなります。
年金を受け取れる65歳から2年間で元を取れるという仕組みです。
なお、iDeCo等と併用する場合には、付加年金保険料を納めることで限度額が減額となってしまうために、注意が必要です。

私的年金保険に加入

初めにご紹介したとおり、年金には公的年金のほか、私的年金があります。
公的年金だけでは不安だという場合やより手厚い内容で老後の備えをしておきたいという場合には、私的年金がおすすめです。
私的年金には終身年金や有期年金、確定年金等、種類が豊富にあることから、自分のニーズに合わせたものを選択することが可能です。
保険はあくまでも、将来に向けた投資であるため、今の生活の負担になりすぎては本末転倒となってしまいます。

現在と未来を見据え、自分の生活水準等を加味したうえで自分に合った保険を見つけましょう。

NISAを利用

2023年までは、株式の個別銘柄投資と積立投資のどちらかしかできませんでした。しかし2024年から新NISAが始まり、双方を柔軟に投資できるように改正されました。また、投資枠も大幅に拡大され、特に積立投資は早く始めれば始めるほど効果が現れます。得られた利益に対しては非課税で受け取れるのも魅力的です。税優遇を受けながら老後の蓄えとして積み立てていくことができるだけでなく、必要に応じていつでも積み立てたお金を引き出すことができるので自由度が高く、ネット証券なら様々な無料サービスが増えてきており、比較的簡単に取り組める資産運用だといえます。

繰り下げ需給をおこなう

年金は原則65歳より受給となりますが、受取年齢を繰り下げることにより金額を増やすことができます。

具体的には、1年遅らせると8.4%の増額となります。これは、年数が増えると比例して増額となっていくことから、例えば2年遅らせれば8.4%×2=16.8%、5年遅らせれば8.4%×5=42%という形で増えていきます。

受け取る年齢を遅らせるほど金額は増えていきますが、それまでの間ある程度の蓄えがあったり、仕事を続けているという状況でなければ繰り下げ需給は難しくなります。

受取金額よりも、その年齢の時に自分がどのような状況(働いているのか?蓄えはどれくらいになっているのか?)を加味したうえで、検討する必要があるといえます。

フリーランス活動を継続する

フリーランスに定年はなく、このメリットを使わない手はありません。これまで取り組んできた事業を継続するのも良いでしょう。先に説明したとおり、会社員と比べて厚生年金の分で不利なことを考えると、年金を受け取りながら仕事を続けるのも対策のひとつです。

そして欲を言えば、簡単ではありませんが、自分自身が動かなくても収益を上げられる事業や仕組みを構築できると、体力が衰える老後でも安泰です。

不動産運用で家賃収入は?

リスクが高いのでおすすめするわけではありませんが、実際に成功している人もいます。ただし、かなり若い頃からやっていないとリターン率が悪いですし、だからと言って、あまりに若い頃から不動産を購入すると60歳超えたときに不動産価値がほぼなくなるようなリスク、場合によっては詐欺のリスクもあります。不動産はある一定の期間が過ぎたら売却して新たな不動産を購入する等、流動的な管理と専門知識、潤沢な資金がないと難しい資産形成であることは理解しておきたい点です。

【まとめ】フリーランスになる際の注意点

以上、フリーランスの老後について実際にどのくらいの金額を年金として受け取ることができるのか、またどのような備えが必要なのかについてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

なんとなく漠然と、フリーランスで老後を迎えるのは不安だというイメージを持ちながらも、何の準備もせずに現状の収入のみを頼りにしてフリーランスとして働き続けるのは危険です。

そうではなく、公的年金としていくらもらえるのか、自分が老後安定した生活を送るのにはさらにどれくらいの金額が必要なのかをある程度明確にすることによって、具体的にどのような蓄えが必要になるのかが見えてきます。

フリーランスのメリットは会社員と比較して、時間の融通が効きやすいことです。実情はフルリモートで移動が一切ない人は稀ですが、組織や人、通勤時間に縛られたりすることがほとんどないのはメリットです。しかしながら、これまで説明したとおり、厚生年金のように否が応でも追加で積み立てる仕組みがありません。時間があるからといって、稼いだお金を無計画に消費することだけは控えましょう。例えば空いた時間は、事業をバージョンアップするために使ったり、利益は維持しつつ事業を省力化できる仕組みを考えたり、資産形成の計画を練ったり、将来につながるような時間の使い方をするのもいいですね。

また、資産形成には時間がかかることも踏まえて、できるだけ早めに動くことを強くおすすめしておきます。ご紹介してきたとおり、方法はさまざまにありますが老後に向けた対策をあらかじめ行っていくことで、フリーランスとして安心して仕事を続けるということにもつながります。

今回お伝えしたことが少しでも参考になれば幸いです。

投稿者プロフィール

sayakyame
現在小学生から幼稚園まで3児の男児子育て真っ最中の主婦です。
3年程前よりライターの仕事を始め、さまざまな分野の執筆を進めています。
前職では人事採用担当の仕事をおこなっており、採用関係や自身の育児や出産にまつわる記事に関しては、実体験をもとに執筆を進めていくことが可能です。

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