フリーランスの業務委託契約でトラブルを回避するための注意点をおさらい

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業務委託は雇用契約とは異なり、労働基準法の適用対象外であることがデメリットです。合わせて、厚生年金や雇用保険の対象外であることも認識しておきましょう。

このように、業務委託にはフリーランスを守るルールが存在しません。そこで業務委託契約書の出番です。業務の裁量や報酬を適正な状態にするためにもルールを明確にすることで労働環境を健全な状態に保つのに役立ちますし、業務上起きうるさまざまなトラブルを未然に防ぐのにも役立ちます。

フリーランスは社会的信用度が低いという状況は残念ながら拭うことはできません。委託側からは対企業ではなく対フリーランスとして身構えられてしまうことも。仕事をスムーズに遂行できるための第一歩である業務委託契約についての理解をより深められるよう、注意点やノウハウをまとめてみました。是非この機会に活用してみてください。

フリーランスの契約形態を理解しよう

フリーランスとして働く場合、クライアントとの契約が必要になります。契約するまではお互い事務的負担が増えますが、結果的には双方にとってスムーズな仕事をするために必要不可欠な工程です。

業務委託契約の方法

大きく分けて直接契約と間接契約があります。簡単に言えば仲介があるかないかです。副業から始めたり、最初は自ら営業をせずに始めることが多く、間接契約になりやすいでしょう。最初は間接契約でも、つながりができれば次回以降は直接契約になる可能性もあります。仲介すると報酬に加えて仲介手数料の扱いが増えたり、意思疎通が取りにくいため委託側も受託側も本来ならば直接契約が望ましいのです。

直接契約

直接契約とは委託者と受託者で業務委託契約が直接取り交わされることを指します。二者間で取り決めをするごくシンプルなやり方です。二者間なので良くも悪くもいいように決められます。メリットはコミュニケーションのスムーズさとコストを抑えられることにあります。

間接契約

間接契約とは委託者と受託者の間に第三者が仲介して取り交わされることを指します。コミュニケーションのスムーズさは直接契約よりも劣りますが、メリットは第三の目があることです。詐欺などのリスクも減らせますので、より健全な契約になりやすいです。

間接契約で代表的なのはクラウドソーシングサービスです。実際は、クラウドソーシングサービスで契約書を取り交わすことはなく、そもそも運営側では発行を承っていない場合が多く、必要ならばクライアントとワーカー間で発行するように、となっているのを見かけます。サービスを利用し契約(マッチング)した時点で三者が業務委託契約に合意をしたことになるためあまり必要性がないようです。

契約形態

業務委託とは一部の仕事を外部に委託すること自体をいい、法律用語ではありません。契約の種類については問いませんが、主に「請負契約」「委任契約」「準委任契約」のうちどれかに該当することが多いです。

ただし、どれに該当するかだけ書かれたものは不充分で、なぜその契約である必要があるのか、条件も踏まえて具体的に書かれているものが安心だと言えます。

請負契約

成果物を完成させることが条件である契約です。

請負契約の場合は、完成した成果物の対価として報酬が発生しますから、未完成の場合には報酬を受け取ることができません。

例えば、ライターの記事執筆、エンジニアのアプリ製作などがこれにあたります。

委任契約

法律行為に関する事務を委託する契約です。

委任契約の場合、法律に関する事務処理の対価として報酬が発生しますから、成果物の有無は問われません。

例えば、税理士に確定申告書を作成してもらう、弁護士に訴訟行為をしてもらう、代理人に代理人契約をしてもらうなどがこれにあたります。

準委任契約

法律以外に関する事務を委託する契約です。

法律行為以外の一定の事務処理に対して報酬が発生します。こちらも委任契約同様に、成果物の有無は問われません。

例えば、コンサルティングやセミナー講演、調査や研究、広告宣伝などがこれにあたります。

業務委託契約書のさまざまな種類

業務委託契約書には、様々な種類があります。契約内容によって必要な契約書の内容が変わります。以下に代表的なものを紹介します。

委託契約書

業務委託を受ける側と委託する側との間で締結される契約書です。業務内容や期間、報酬、機密保持などが定められます。

特定業務委託契約書

一定の業務に限定して委託する場合に締結される契約書です。例えば、ウェブデザインやプログラミングなどの特定の業務に限定して委託する場合に用いられます。

製造委託契約書

製品の製造を委託する場合に締結される契約書です。製品の仕様、数量、価格、納期などが定められます。

販売委託契約書

商品の販売を委託する場合に締結される契約書です。販売手数料や売上高の分配などが定められます。

コンサルティング契約書

専門的な知識や技能を有する人物が、委託を受けてコンサルティング業務を行う場合に締結される契約書です。コンサルティングの内容や報酬、期間などが定められます。

代理店契約書

製品やサービスを販売する代理店との間で締結される契約書です。代理店の権限や販売条件、報酬などが定められます。

この様に、契約の形態によって内容が異なるといった特徴があります。

業務委託契約書に何を書いたらいいのか

業務委託契約書には、以下のような項目が含まれることが一般的です。業務委託契約書の内容は全て把握しておきましょう。一部分だけ切り取ってしまうと、もし他の項目や条件と繋がっていた場合、話が噛み合わずトラブルになりかねません。

委託者、受託者の名称

契約の委託者と受託者を明確にします。住所、名称、代表者、捺印が必要になります。

業務の目的

なぜこの業務が必要なのか、委託側の意図が汲み取れます。委託・受託の関係化をはっきりさせておくことが重要です。

業務範囲

業務終了後、成果物に対するサポートの有無はかなり重要です。期間を定めなければいつになっても仕事が途切れず、他の業務に移ることができませんし、効率低下を招きます。

場合によっては修正費用がかかることを提示しても良いでしょう。請負契約でよくあるのが「〇回まで修正無料、以降は1回の修正につき△△円」などです。

最終納期(スケジュール)

業務の最終納期や契約期間が設定されています。また、複雑な業務であれば、最終納期までのスケジュールを明確にし、期間中に進捗が分かるようにすることで、納期間際のトラブルを避けることが可能です。

報酬(期日と税)

報酬額や支払い方法、支払い期日が記載されています。準委任契約の場合は、報酬金額の算出方法も記載するケースがあります。インボイス制度により受託側が免税事業者の場合は消費税分を差し引かれることも覚悟しておきましょう。

保証事項

委託業務の品質や完了時期についての保証、機密保持に関する規定、委託者の指示に従うことなどが規定されています。委託側が思うような成果物を得られなかった場合の保証、ペナルティ、フォローなどがあります。

責任事項

委託者・受託者の責任範囲、補償義務、損害賠償の責任などを明確に規定します。

機密保持

業務に関する機密情報の保持に関する規定を定めます。

個人情報の取り扱い

受託者が扱う個人情報について、法令に基づいた適切な取り扱いを行うことを定めます。

契約解除・解除料

契約解除に関する条件や解除料の規定を明確にします。

その他

通知方法、管轄裁判所、契約書の複製など、必要に応じて追加することができます。

業務委託契約書は、委託者と受託者が共に納得のいく内容になるよう、詳細に記載することが重要です。また、契約書の内容は、法律的な専門知識が必要な場合があるため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

契約を結ぶ流れ

フリーランスが契約を結ぶ流れを説明します。フリーランスが契約を結ぶ際には、クライアントとのコミュニケーションや交渉能力が求められ、契約書に不備がある場合などは、早急に修正することが重要です。そのためにも、契約書の確認や交渉に時間をかけ、納得できる契約内容を作ることが重要と言えるでしょう。

1.仕事の依頼や打ち合わせ

クライアントからの依頼内容を確認します。依頼内容について詳細を確認し、クライアントの要望や期待に合わせた提案をすることが求められます。まずはクライアントとの打ち合わせを行い、依頼される仕事内容や期間、報酬、納品物、契約に関する条件などを確認します。

2.契約書の作成

クライアントとの取引内容を明確にするため、契約書を作成します。契約書には、擦り合わせた依頼内容や納期、報酬などの条件が含まれます。契約書は、クライアントが作成する場合とフリーランス自身が作成する場合があります。その後契約内容を提示し、クライアントから提示された契約内容を確認し、問題がなければ契約書を受け取ります。

3.契約書の確認と修正

契約書を十分に確認し、納得できる内容かどうかを確認し、交渉に入りましょう。契約内容に不備や疑問点がある場合は、クライアントと検討・交渉を繰り返し、合意できる条件に修正することができます。

特に報酬などのお金や納期などの時間の条件について、双方で合意ができるように話し合います。クライアントとの交渉は、メールや電話などで行うことが多いです。

4.署名・提出

契約書の条件が決定し問題がなければ、クライアントとフリーランスの双方が署名します。署名したものをお互いに提出し合って契約完了となります。契約書は両者が保管し、必要に応じて参照します。最近では電子契約が主流になりつつあり、事務的負担を減らせられるメリットがあります。無料で試せるプランを使用して一度検討してみてもよいかもしれません。

契約を結ぶ時の注意点

フリーランスが契約を結ぶ際には、いくつか注意点があります。契約書は齟齬が命取りになりますので、疑問点は必ず擦り合わせを行い、クリアにしておきましょう。

契約書の確認

契約書の細かい条項や、契約期間、報酬、納品物の内容など、重要な部分を見逃さないように細心の注意を払って確認することが大切です。また、契約書に不備がある場合には、修正するようにクライアントと交渉しましょう。

報酬の支払い方法やタイミング

報酬の支払い方法やタイミングについては、契約書に明記されていることを確認しましょう。特に、クライアントから前払いや後払い、分割払いなどの支払い条件が提示される場合には、注意が必要です。

契約期間の延長や解約について

契約期間が延長される場合や、解約する場合についても契約書に明記されていることを確認しましょう。契約期間の延長には、双方の同意が必要となることが多く、注意が必要です。

また、民法第641条で、委託側はいつでも契約の解除ができるとされています。ただし、本来支払うはずだった業務委託料を受託側に支払わなければなりません。したがって途中で解約されてしまうこともありえます。

逆に、受託側の都合で業務遂行不可や成果物が当初の予定を達成できず途中で未完了となってしまったら、違約金が発生することもありますし、委託側に損害を被れば最悪、賠償請求をされて責任を負うケースもあります。途中解約についても明確にされていればトラブルにはなりません。

秘密保持契約

特にソフトウェア開発委託の場合は秘密保持契約が多く登場します。なぜなら、仕事の発注元である依頼者が持っている技術や仕組みを目にする機会が多くなるからです。世にまだ公開されていないシステムや技術が事前にわかってしまうこともあります。万が一のことを考えて過剰になりすぎない秘密保持条項は明確にすべきです。

著作権の帰属

例えば動画制作やイラスト制作など著作権が発生する案件の場合は注意が必要です。著作権はオリジナルを制作した時点で制作者本人に自然発生します。申請が必要な特許とは大きく異なります。

著作権の帰属が最終的に仕事発注元の委託側になるのか受託側になるのかを明確にします。仮に受託者へ著作権が帰属されたとしても、その著作物を他の仕事で転用することは良いのかもポイントです。

原則として著作権は制作者側に帰属されるのが一般的ですが動画やイラストなどオリジナリティな芸術に関する場合「納品物に関してはすべて委託側に帰属する」となっている場合は注意が必要です。

損害賠償発生の想定

主に受託側が何らかの理由で債務不履行になってしまった場合、具体的な債務不履行内容と損害賠償金を明確にしているのが良い契約書と言えます。

他にも顧客情報を受託側が漏洩させてしまった場合は責任の所在が明らかなので損害賠償請求の対象になります。しかし、受託側のケガ・心身の病気・死亡などによるものは責任の所在を明らかにしづらいです。受託側の負担が大きくなるため、損害賠償範囲が広すぎないか確認しましょう。

税金や社会保険の扱い

フリーランスは、個人事業主として税金や社会保険についての取り扱いについて自己責任であることが多いため、契約書で取り決められることがあるので確認しましょう。

以上のような注意点を念頭に置きながら、契約書の確認や交渉を進めることが、フリーランスとしてのビジネスを成功させるために重要です。

フリーランスは自分で自分の身を守る必要がある

フリーランスは自分で自分の身を守る必要があります。フリーランスは、個人事業主として独立して活動しているため、自己責任でビジネスを行うことになります。そのため、契約や納品物の品質、報酬や支払いに関するトラブルなどが発生した場合には、自己責任で対応する必要があります。

また、フリーランスとして活動する場合には、税金や社会保険などの法的な問題にも自己責任で対処しなければなりません。例えば、適切な申告や納付がなされていない場合には、税務署から課税されたり、違反金が課される可能性があります。さらに、健康保険や厚生年金などの社会保険に加入していない場合には、万一の事故や病気などで収入が減少するリスクがあります。

そのため、フリーランスは契約や取引先の選定、税金や社会保険の手続き、リスクマネジメントなど、ビジネスに関するあらゆる側面を自己責任で管理する必要があります。しっかりとしたビジネスプランを立て、法的な問題にも十分に目を向けながら、安定的かつ長期的なビジネスを展開していくことが大切です。

投稿者プロフィール

sayakyame
現在小学生から幼稚園まで3児の男児子育て真っ最中の主婦です。
3年程前よりライターの仕事を始め、さまざまな分野の執筆を進めています。
前職では人事採用担当の仕事をおこなっており、採用関係や自身の育児や出産にまつわる記事に関しては、実体験をもとに執筆を進めていくことが可能です。

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