2020年の新型コロナウィルスをきっかけに働き方を見直した人は多いのではないでしょうか。実際に場所や時間を問わず、自分が好きなタイミングで自由に働けるフリーランスに転身している人が増えています。さらに場所を問わず働けるため、国内にとどまらず就労ビザを取得して海外就労を目指している人も少なくありません。そこで今回は、フリーランスとして海外で働くために必要な就労ビザについて、就労ビザの取得申請に必要なものや注意点を紹介します。海外に移住してフリーランスとして活動していきたい方や、国際交流なども含め就労ビザの知識に興味があった方はぜひ本記事を参考にしてみてください。
フリーランスが海外で働くことはできる?
国内での活動に見切りをつけ、海外でフリーランスとして働きたいと考えていませんか?実はフリーランスとして海外で働くことはできます。日本では珍しく感じてしまうかもしれませんが、海外では個人事業主として働く人は多く一般的な働き方として定着しています。そのため、スキルや語学力があれば国内だけでなく、海外で自分の活動をアピールして案件を獲得してフリーランスとして活動していくことは可能ですし、むしろビジネスチャンスが転がっている市場といえるでしょう。しかし、海外で働くためには事前準備として情報収集をしたりステップを踏んでいくことが大切です。気になるビザ取得や納税問題などについては別で詳しく紹介していきます。
「就労ビザ」とは何か
日本の場合、日本国籍のない外国人が日本で暮らすために在留資格制度を設けています。在留資格は活動内容に応じて分類されており、日本で技術やスキルを身に付けたり働くことを目的とした在留資格として「就労ビザ」が用いられています。日本を含め多くの国が外国人の就労を、就労ビザという形で厳密に管理するのは、海外から「安い労働力」が大量に入ってくると、自国民の失業や国の経済力低下につながり、自国の経済を管理できなくなる可能性を避けるためです。
日本国内でも外国人が就労ビザを取得しているかが重要視されていますが、もしも海外でフリーランス活動するためには、滞在国の就労ビザを取得する必要があります。滞在国を絞っておく必要はありますが、事前に滞在国の就労ビザに関する情報を集めておきましょう。万が一、就労ビザを取得せずに現地で仕事をしてしまうと、罰金や強制送還などの問題につながり、知らなかったでは済まされない状況に陥ってしまいます。収入を安定させるために案件獲得に目がいきがちですが、まずは海外でフリーランス活動するために滞在国の就労ビザを取得しましょう。
一般的に滞在国各国に就労ビザが用意されており、滞在国が指定する就労ビザ取得要件を満たせば、フリーランスでも就労ビザは取得することが可能です。注意点としては、滞在国によって就労ビザの内容や取得要件は異なるので、必ず滞在国を明確にしてから準備を進めましょう。
ビザ取得申請に必要なもの
では、実際に海外でフリーランス活動を本格的に始動させるために、就労ビザを取得するのに必要な申請や必要なものを紹介します。注意点としてあくまで一例となります。滞在国によっては指定されている必要なものが異なる可能性があるため、必ずご自身でも調べてみてください。
就労ビザを取得する際に重要な条件
就労ビザを取得するためには、滞在国各々が指定している条件を満たしていなければいけません。一般的にチェックされる項目としては以下が挙げられます。
- 最終学歴
- フリーランスとしての活動内容
- 報酬の金額
意外と最終学歴が重視されており、大学院・四年生大学・短期大学・専門学校などが求められます。万が一最終学歴が高卒以下の場合は、フリーランスで働く業務内容の実務経験を最低3年以上など、経験年数を求められることがあるので、滞在国の条件を必ずチェックしておきましょう。
就労ビザ取得条件の例
ここでは各国の就労ビザについて簡単に紹介します。とはいえ、条件を一部抜粋している情報となるため、本格的に就労ビザの取得を目指す場合には最新の情報を確認してください。
韓国
就労ビザの種類(名称):特定活動ビザ、D-7(企業内転職ビザ)など
主な必要条件:原則大卒以上、就業内容に関連する学位、実務経験など
主な必要書類:卒業証明書、職務経歴書など
その他の注意点:就労ビザ取得の前に、就労ビザ発行許可(CCVI)が必要
タイ
就労ビザの種類(名称):Non-Immigrant B VISA
主な必要条件:専門性または管理者経験、基本月収50,000バーツ以上、など
主な必要書類:職務経歴書、健康診断書など
その他の注意点:就労ビザのほかに、労働許可が必要。39業種については外国人の就労禁止
シンガポール
就労ビザの種類(名称):EP Pass、S Pass
主な必要条件:専門・短大卒、実務経験、基本月収2,200シンガポールドル以上、など
主な必要書類:職務経歴書、健康診断書など
その他の注意点:事前のオンライン申請と入国後の面接が必要
マレーシア
就労ビザの種類(名称):雇用パス、一時就労パス、プロフェッショナルパス
主な必要条件:専門卒以上、職務経験(学歴によって異なる)など
主な必要書類:職務経歴書、健康診断書など
その他の注意点:就労ビザ申請には、入国許可証(Entry Approval Letter)が必要
就労ビザ取得の手順と注意点
就労ビザが許可される基準は滞在国によって異なるため、ある程度の取得までの流れや注意点を把握しておきましょう。ここでは一般的な、海外で就労ビザを取得するための手順を紹介します。
ビザを取得するための手順
ここでは一般的な、海外で就労ビザを取得するための手順を紹介します。
滞在国にある会社と業務委託契約を結ぶ
就労ビザの審査基準として報酬額(月収・年収)を設けている国があります。その場合、滞在国の企業と業務委託契約を結ぶ必要があります。海外のフリーランスに限った話ではありませんが、複数のクライアントと契約を結び、安定的に報酬を得られるようにしましょう。
日本国内でフリーランスとして働く場合は、クライアントとの契約が終了してしまっても、次のクライアントを探せば問題ありません。ここでいう「問題ない」というのは、「仕事がなくなることに対するペナルティがない」という意味です(無収入で暮らせるかどうかは別問題)。
しかし、報酬額が就労ビザの審査対象となっている国では、クライアントとの契約が終了して報酬がなくなると、就労ビザの取得要件を満たさなくなる可能性があります。そうなると、その国にいられなくなることもあるのです。事前の事業計画(売上計画)に変更が生じそうなときは、すぐに次のクライアントと業務委託契約を結ぶようにしましょう。
就労ビザ取得に必要な書類を用意する
就労ビザ取得には次のような資料が必要です。ただし、渡航先の国によって必要な書類は変わります。
- 卒業証明書(大学以上)
- 職務経歴書
- 健康診断書
- 前職の在籍証明書
- 犯罪経歴証明書
- 住宅の賃貸証明書(インド国内のもの。インドの場合)
就労ビザの取得要件に学歴が必要な場合、基本的に大卒以上となっています。そのため、卒業した大学、あるいは大学院の卒業証明書を用意しましょう。卒業証明書は、大学を卒業するときに卒業証書と一緒に受け取ります。紛失してしまったり、これまでの就職先などに提出してしまって手元にない場合は、卒業した大学に連絡して再発行してもらいましょう。
前職の在籍証明書は、その会社に過去在籍していたことを証明する書類です。在籍していた会社が複数ある場合は、すべての会社に依頼して発行してもらう必要があります。
犯罪経歴証明書とは罰金刑以上の刑罰歴が記載された書類です。ただし、交通違反の反則金や少年法条の処分(保護観察、少年院送致など)は記載されません。罰金刑であれば略式起訴の場合でも記載されます。また、執行猶予の場合も記載されます。入手したい場合は、各都道府県の警察に申し出ましょう(※1)。
書類に不備があると、何度か渡航することになる場合もあります。事前に必要な書類を確認し、漏れがないようにしましょう。
※1:警視庁「渡航証明(犯罪経歴証明書)の申請について」
滞在国に渡航する
一部の国では自国内(渡航先の国)でのみ就労ビザの申請ができます。その場合は、短期滞在用のビザやビザなしで一旦渡航してから就労ビザを申請します。就労ビザの申請には数か月かかることもあるため、短期滞在用のビザの期限が切れないように気を付けましょう。
また、就労ビザとは別に労働許可(就労許可)が必要な国もあるため、事前に調べておきましょう。
就労ビザを申請する
就労ビザの申請は契約先の企業がサポートしてくれる場合があります。また、現地には就労ビザの申請代行会社があるため、自身で申請する必要がある場合は申請代行会社を頼るのも良いでしょう。書類の翻訳なども行ってくれます。
ビザを取得するときの注意点
海外で就労許可(就労ビザ等)を得るのは、意外に大変です。不備があって渡航先の国の法令に触れると、高額な罰金を請求されたり、日本へ強制送還となる場合があります。ここでは国別に、就労ビザに関する注意点を紹介いたしますので、よく確認してみてください。
アメリカ
そもそも、フリーランスとして就労するための就労ビザはありません。その代わり、現地企業にビザのスポンサーになってもらう必要があり、事業プランや資金計画の説明・提出を求められることがあります。
中国
中国ではそもそもフリーランスに就労ビザの発行が認められていません。中国で就労できるのは、現地企業に雇用されている労働者のみです(日系企業からの出張者等を除く)。
台湾
台湾では就労ビザのほかに、就労許可も必要となります。中国(本土)とは制度が異なる点に注意が必要です。
タイ
タイでは就労ビザの他に労働許可証が必要となります。労働許可証を取得するためには、タイに入国した後90日以内に労働省労働監督局、あるいはバンコクにあるワンスタート・ワンストップ投資センターに行く必要があります。
ベトナム
ベトナムにはフリーランス用のビザがないため、中国同様に現地企業に雇用される必要があります。
フィリピン
フィリピンでは就労ビザに加えて「外国人雇用許可証(AEP)」と「外国人登録書(ACR I-card)」が必要になるため、それらの申請もするようにしましょう。
インド
事前のオンライン申請が必要となります。忘れずに申請するようにしましょう。
納税はどの国にすればいい?
海外在住でフリーランスとして活動していたとしても、国内での源泉所得がある場合には課税対象になり、日本での確定申告が必要になることは覚えておきましょう。ポイントは日本に居住しているかどうかです。国内に1年以上居住している、もしくは国内に居所を有する者は日本の納税ルールに従い税金を支払う必要があります。一方で、海外で1年以上滞在する場合は非居住者にあたり、滞在している国の納税ルールに従って納税を行いましょう。
ここでいう「国内での所得」とは業務をした結果、日本国内で得た所得になります。たとえば、海外に居住するフリーランスが日本の企業からリモートで仕事を受注し、日本の銀行に日本円で報酬を振り込まれても「国内での所得」とはなりません。しかし、製作した著作物等により、日本国内で著作権料が発生した場合は「国内での所得」となります。不動産(住宅、事務所等)の家賃収入や、譲渡所得についても同じ考え方となりますので、覚えておきましょう。
このほかにも注意しなければならないポイントはいくつもあるため、判断が難しい場合には税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
この記事ではフリーランスが海外で働くときに必要な就労ビザについて、申請方法や注意点を解説してきました。
フリーランスは完全実力主義の世界です。スキル(語学スキルを含む)さえあれば、海外でもフリーランスとして仕事ができます。しかし、渡航先の国で就労するにはパスポートの他に就労ビザが必要です。
就労ビザとは、その国での就労許可証のようなもの。日本もそうですが、著しく安い労働力が国内に流れ込んだり、国内の資金が海外に流出するのを防ぐため、就労には事前の許可が必要になっています。一部の国では、就労ビザの他にも労働許可(就労許可)が必要な場合があるため、注意が必要です。
就労ビザの取得には、報酬が要件になっている国も。その場合は、事前に現地の企業と業務委託契約を結ぶ必要があります。
就労ビザ取得の要件は国によって異なりますが、おおむね専門学校・短期大学・大学卒業以上であることが求められます。また、職務経歴書や前職の在籍証明書、健康診断書に犯罪経歴証明書が必要な場合もありますので、もれなくすべての書類を準備するようにしましょう。
一部の国では自国内(渡航先)でしか就労ビザを発行できない場合があります。その場合は、短期滞在用のビザやビザなしで一旦渡航し、現地で就労ビザを申請します。その場合は、現地の会社や申請代行会社が申請をサポートしてくれる場合があるでしょう。
海外で1年以上滞在する場合は日本における「非居住者」となり、日本国内で暮らす人と納税のルールが異なってきます。自身が海外に住んでいて稼いだ所得に対しては、クライアントの国籍が日本でも課税対象になりませんが、著作権料や不動産収入など日本国内で所得が発生した場合には、海外に住んでいても課税対象となります。
フリーランスとして海外で働くには困難もたくさんあります。しかし、あなたはその先にある自分が思い描く自由を求めて今日まで努力してきたのだと思います。あと少しだけ、頑張れば長年の夢が叶うかもしれません。いつか必ず海外で働く人材となれるよう、もう少しだけ頑張ってみましょう。
投稿者プロフィール
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私は10年以上にわたり、デザイナーとしてのキャリアを積んできたフリーランスデザイナーです。デザインの魔法に魅了され、クリエイティブなアイデアを実現することが私の情熱です。
さまざまなデザインプロジェクトに携わり、ロゴ、ウェブ、印刷物、パッケージなど、多岐にわたる分野での経験を積んでいます。美しさと実用性を融合させ、クライアントのビジョンを実現するお手伝いを心から楽しんでいます。
クライアントとの協力を大切にし、オープンなコミュニケーションを通じて共にプロジェクトを築き上げます。納期を守り、高品質な成果物を提供することをお約束します。
私のデザインはビジネスに魅力を与え、ブランドを輝かせます。クリエイティブなアプローチと柔軟性を大切にし、クライアントの期待をいつも超えることを目指しています。一緒に素晴らしいプロジェクトを実現しましょう。
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