消費税。この言葉から何をイメージするでしょうか?
多くの方は商品を買うときに、商品の代金に上乗せして支払う税金をイメージするでしょう。消費者目線としてはこれが正しい消費税の姿です。しかし、フリーランス(事業者)の場合は少し異なります。
目次
フリーランスの「消費税」って何?
月末にクライアントに送付している請求書に「消費税」という項目があるのではないでしょうか?フリーランスは案件の報酬を受け取るときにクライアントから消費税を受け取っているのです。
それでは受け取った消費税はどのようにすればいいのでしょうか?
本来であれば受け取った消費税はフリーランス(事業者)が国に納めなければなりません。しかし、次の場合に限っては免除されます。
- 前々年の1月1日〜12月31日の売上が1,000万円以下の事業者
- 開業して2年以内の事業者
ただし、(1)に該当する場合でも前年の1月1日〜6月30日までの売上が1,000万円以上の場合は納税の義務があります。
なぜ消費者ではなく事業者側が納税するのか
税金には直接税と間接税の2種類があります。
・直接税:税金を負担する人と納める人が同じ税金のこと
・間接税:税金を負担する人と納める人が異なる税金のこと
所得税や自動車税は直接税のため、負担する人が納めます。反対に消費税は間接税のため事業者が納めます。
消費者として小売店でものを買ったときに、消費税を国に納めた方はいないはずです。消費税を国に納めるのは、あくまでも消費者から消費税を預かった小売店(事業者)なのです。
しかし、フリーランスであるあなたがクライアントから報酬を受け取る場合は、立場が逆転します。クライアントが消費税を支払う消費者であり、あなたが消費税を国に納める事業者になるのです。
請求書を作る前にクライアントに税込・税抜を確認しておく
どのようにしてクライアントから消費税を受け取ればいいのでしょうか?
あなたは月末にクライアントに請求書を送付していることでしょう。請求書には消費前の記載欄があり、報酬(ライターであれば原稿料など)に消費税を上乗せして請求しているはずです。
もし、消費税が上乗せされていなければ、あなたは消費税10%分だけ損していることになってしまいます。一度きちんと請求書を確認して、消費税を請求できているか確認してみてください。
計算方法と納税方法・期間・どこに納めるの?
・2種類ある消費税の計算方法
消費税の計算方法は2種類あります。
1つ目は本則課税。計算方法は単純で仕入れたときに支払った消費税から、販売したときに消費者から預かった消費税を引いて算出します。
たとえばあなたがPCを購入し、そのPCを使用して作成した原稿をクライアントに納めたとします。PCの代金が10万円、原稿料が15万円だとしましょう。
・納税額 = PCの消費税1万円 − 原稿料の消費税1万5千円 = −5千円
この場合、納税額は5千円となります。このように支払った消費税と消費者から預かった消費税の差額を納めるのが本則課税です。例では納税しましたが、受け取った消費税の方が少ない場合は還付金を受け取れます。
2つ目は簡易課税。
簡易課税は売上5,000万円以下の小規模事業者向けの制度です。簡易課税では受け取った消費税と「みなし税率」を使って、納税額を計算します。
・納税額 = 受け取った消費税 − (受け取った消費税×みなし税率)
みなし税率は業種によって異なります。
表1 業種による異なるみなし税率
事業区分 | みなし税率 | 業種 |
第1種 | 90% | 卸売業 |
第2種 | 80% | 小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) |
第3種 | 70% | 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業、および水道業 |
第4種 | 60% | 第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業、及び第6種事業以外の事業 |
第5種 | 50% | 運輸通信業、金融業および保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業を除く) |
第6種 | 40% | 不動産業 |
※「国税庁 No.6505 簡易課税制度」より抜粋
簡易課税は受け取った消費税額がわかれば計算できるため、会計処理の負担が小さいという特徴があります。
しかし、本則課税で計算すると還付金を受け取れる場合でも、簡易課税を選択した時点で還付金は受け取れなくなりますので、注意してください。
また、簡易課税を選択した場合は最低2年間、本則課税の適用は不可となります。
・確定申告の対象期間と申告期限
確定申告の対象期間は1月1日から12月31日。この期間の所得(売上から経費や控除を引いたもの)を翌年の2月16日から3月31日までに申告します。また、消費税や所得税も同じ期間のうちに納める必要があります。
国内の多くの企業では4月1日〜翌年3月31日という会計年度を採用していますが、確定申告の対象期間と異なるので注意が必要です。
・納税方法と消費税を納める場所
納税方法は次の4つとなります。
- 銀行口座からの振替
- インターネットから電子納税(e-tax)
- 銀行や税務署で納付書を利用して納税
- クレジットカードで納税
消費税を現金で納める場合、納税場所は税務署か金融機関となります。とくにはじめて確定申告するときは、所管の税務署の場所や納税に対応しているお近くの金融機関を調べておきましょう。
遂に始まる「インボイス」制度とは?
・「インボイス制度」の概要
「インボイス制度」。正式名称は「適格請求書等保存方式」といいます。事前に登録された課税事業者のみが発行できるインボイス(適格請求書)。インボイス制度がはじまると適格請求書がないと消費税額を法的に証明できなくなるのです。
消費税額を証明できないと、どうなるのでしょうか?本則課税では納税額を計算するときに、支払った消費税の金額が必要でしたね。適格請求書がないと支払った消費税額を証明できず、法的には支払っていないとされてしまうのです。
本則課税の計算例では1万円の消費税を支払って1万5千円の消費税を預かったため、5千円を納税しました。しかし、支払った消費税額を証明できないと消費税額が0円とみなされ、1万5千円を納税する必要があるのです。
・「インボイス制度」はなぜフリーランス泣かせといわれるのか?
消費税を納める義務があるのは売上1,000万円以上(詳細は前述)の事業者のみ。一方、フリーランスで売上が1,000万円以上ある人はそう多くないでしょう。つまり、フリーランスの多くは消費税を納めていないと考えられます(免税事業者)。
しかし、インボイス制度に登録すると売上1,000万円以下でも消費税を納める義務が発生します。そうなると、今まで納めていなかった消費税分だけ損することになるのです。
「インボイス制度に登録しなければいい」と思うかもしれません。しかし、クライアントがインボイス制度に登録しているにもかかわらず、取引相手であるあなたが登録していないとクライアントに不利益が生じます。クライアントはあなたに支払った消費税額を証明できないため、損することになるのです。あるいは消費税分だけ報酬を下げたり、取引停止を提案するかもしれません。
世の中全体の動きとしては、多くの事業者がインボイス制度に登録することが予想されます。インボイス制度に登録して消費税を納めるか、報酬の減額や取引停止を覚悟で免税事業者のままいるのかは自由ですが、難しい選択です。
また、インボイス制度開始後6年間は経過措置が有効となります。適格請求書を発行しない(できない)事業者からの仕入れ税額の一部を控除できるのです。対象期間と控除税率は次の通りです。
・令和5年10月〜令和8年9月:80%
・令和8年10月〜令和11年9月:50%
・適格請求書に記載する項目とは?
インボイス制度に登録して適格請求書を発行するとしましょう。適格請求書といっても現状の請求書とは別の書類を発行するわけではありません。次の項目が含まれていれば適格請求書となるのです。
- 氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
適格請求書を発行する前に取引先と記載項目を確認し、漏れがないようにしましょう。
新たな制度の導入前にしっかり理解しておこう
インボイス制度はこれまでより処理が複雑になるだけでなく、フリーランスにとって金銭的に不利な一面がある制度です。しかし、世の中の多くの事業者はインボイス制度に登録する流れになるでしょう。メリット、デメリットをよく比較してインボイス制度に登録するか決めましょう
なお、制度開始となる2023年10月1日から適格請求書を発行するためには、2023年3月31日までにインボイス制度に登録する必要があります。
インボイス制度の情報を正しく理解して、正しく納税しましょう。
投稿者プロフィール
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私は10年以上にわたり、デザイナーとしてのキャリアを積んできたフリーランスデザイナーです。デザインの魔法に魅了され、クリエイティブなアイデアを実現することが私の情熱です。
さまざまなデザインプロジェクトに携わり、ロゴ、ウェブ、印刷物、パッケージなど、多岐にわたる分野での経験を積んでいます。美しさと実用性を融合させ、クライアントのビジョンを実現するお手伝いを心から楽しんでいます。
クライアントとの協力を大切にし、オープンなコミュニケーションを通じて共にプロジェクトを築き上げます。納期を守り、高品質な成果物を提供することをお約束します。
私のデザインはビジネスに魅力を与え、ブランドを輝かせます。クリエイティブなアプローチと柔軟性を大切にし、クライアントの期待をいつも超えることを目指しています。一緒に素晴らしいプロジェクトを実現しましょう。
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