業務委託契約書はフリーランスにとって、安心して業務を進めるために必要な書類です。
業務委託契約書は業務を依頼する側が作成しますが、依頼を受ける側のフリーランスも業務委託契約書を正しく理解することが大切です。
契約の不利な条件に気づく知識を持つことで、トラブルを未然に回避することが可能になります。
今回は、業務委託契約書で注意すべきポイントと、フリーランスが業務委託契約書を作成する場合に、必要な知識をまとめました。業務委託契約書に印紙が必要になる条件なども含め簡潔に解説します。
フリーランスにも業務委託契約書が必要なのか
フリーランスにとって業務委託契約書は、報酬の支払いや労働環境を守るために非常に重要な役割を持つため必要な書類と言えます。
しかし、フリーランスとして活動を始めて間もない方は、業務委託契約書がない契約も経験しているのではないでしょうか?
契約が成立する条件とは
契約成立の条件は民法第522条「契約の成立と方式」に定められています。
この条文を要約すると、契約の成立は依頼する側と依頼を受ける側の合意が条件とされています。つまり、書面(業務委託契約書)の有無ではなく、双方の合意の有無が重要視されます。
そのためメールであっても、双方の合意がある場合は契約が成立します。
また、契約には契約相手や契約内容を決める自由(契約自由の原則)が認められており、法律や公序良俗に違反しない内容であれば、契約が成立します。
例えば、数日かかる業務が数千円程度の低単価であっても、双方の合意があった場合は契約が成立してしまいます。契約が自由ということは適正な業務内容と報酬の契約をしないと、労働条件は悪化してしまうということでもあります。
さらに、契約書がないため、長時間かかる複数回の修正指示や支払い期日の設定がなく、最終的に未支払いになる危険性もあります。
このような契約自体の自由度の高さが、フリーランスに業務委託契約書が必要とされる理由と言えます。
業務委託契約書とは何か
業務委託契約書は、業務を委託する側と受託する側、双方の合意によって作成される契約書です。
委託者から業務の申し込みがあり、受託者が期日や料金の条件を新たに提案する、このような交渉を繰り返し、最終的に双方が条件に合意すると契約が成立します。業務委託契約書には、合意した内容のみで委託者が作成し、双方に一通ずつ保管します。
業務委託契約の種類
業務委託には、請負契約、委任契約、準委任契約の3種類があります。
請負契約
業務内容の完了、成果が報酬の条件となる契約です。
業務による成果物の納品、設定期間内に設定金額の売上達成など成果が決められている契約です。
委任契約
法律行為を委託する場合が委任契約になります。
準委任契約
法律行為以外の委任契約を指します。
業務内容の完了ではなく、設定期間中に業務を遂行することが義務となる契約です。
請負契約と異なり、結果ではなく契約期間中の行動が報酬の対象になります。
一定期間のコンサルティング業務などが該当します。
業務委託のデメリット
業務委託には、大きなデメリットが1つあります。
企業に雇用されている場合は雇用契約となり、労働条件は労働基準法によって守られますが、業務委託で仕事をするフリーランスには労働基準法が適用されません。
そのため適正な労働の内容や報酬額を業務委託契約書として残すことで、自分の意志で労働環境を守る必要があります。
この点もフリーランスに業務委託契約書が必要な理由です。
エビデンス(証拠)としての業務委託契約書
法的にフリーランスは口約束の依頼で仕事をすることも可能です。しかし、トラブルが発生した場合に契約書がないと、契約内容の証明ができないため対応方法も限られます。立場によっては不利な状況になることも考えられます。
業務委託契約書は、事前にどのような契約があったのかを示すエビデンス(証拠)として役立ちます。そのため労働基準法が適用されないフリーランスこそ、業務委託契約書が必要だと言えます。
契約書を作成するポイント
業務委託契約書には、具体的にどのような項目を記載するべきなのでしょうか?
業務委託契約書に記載するべき項目とは
1.委託者、受託者の名称
契約の委託者と受託者を明確にします。
住所、名称、代表者、捺印が必要になります。
2.業務内容(業務範囲)
委託された業務の具体的な内容と範囲を明確にします。範囲外の業務は追加料金がかかる、成果物の修正回数は2回までなど、業務と報酬に対して適正な範囲を設定します。
3.最終納期(スケジュール)
業務の最終納期や契約期間を記載します。また、複雑な業務であれば、最終納期までのスケジュールを明確にし、期間中に進捗が分かるようにすることで、納期間際のトラブルを避けることが可能です。
4.報酬(期日と税)
報酬額や支払い方法、支払い期日を記載します。
準委任契約の場合は、報酬金額の算出方法も記載するケースがあります。
また、報酬額に消費税が含まれるのか、源泉徴収の有無、振り込み手数料をどちらが負担するのかなども明確にします。
5.成果物の知的財産権
知的財産権が発生する成果物を納品する場合は、委託者と受託者のどちらが知的財産権の保持者となるのかを明確にします。
一部の権利だけを移転する場合は、二次利用の範囲、加工範囲の設定なども必要に応じて記載します。
6.契約解除
契約解除について記載します。
契約書に定めた内容に違反があった場合に、どのような対処をするかを定めておきます。
7.詳細な条件
・禁止事項の設定
・秘密保持(業務で得た情報の漏洩をしない)
・再委託の可否(引き受けた業務を他者に委託することの可否)
・管轄裁判所(契約書に関わる裁判を行う際の管轄裁判所を明記)
・反社会勢力の排除について(双方が反社会勢力との関りがないことを明記)
・契約書に定めがないトラブルなどの対処方法
契約内容に応じて契約書の内容を調節
業務委託契約書には、詳細な契約書や簡易版の契約書があります。
簡易版は、1から4までの項目を記載、捺印するだけで使用できるタイプもあるため、契約の金額や契約期間に応じて使い分けましょう。
契約書の書き方
フリーランスや個人事業主が業務委託契約書を作成する場合、専用のテンプレートを利用する方法があります。
ビジネス系のテンプレート専門サイトなど、信頼できるサイトから契約内容にあったテンプレートをダウンロードします。
その際に、文言をそのまま使用するのではなく、契約内容に応じてテンプレートを修正することが必要になります。
はじめての業務委託契約書は専門家に依頼する
高額な契約では、業務委託契約書の内容が不十分な場合、トラブルに発展する可能性があります。はじめての作成では専門家に依頼することも検討しましょう。
業務委託契約書の収入印紙はいくらから?
業務委託契約書は契約金額に応じた印紙が、契約書1通ごとに必要になります。
3カ月を超える長期契約では、契約書1通につき一律4,000円の印紙が必要になります。この場合は、双方が1通ずつ印紙代を負担する傾向があります。
契約金額の記載がない場合の印紙は200円になります。
契約金額別印紙代
・1万円未満・・・不要
・1万円~100万円以下・・・200円
・100万円を上回り200万円以下・・・400円
・200万円を上回り300万円以下・・・1,000円
・300万円を上回り500万円以下・・・2,000円
・500万円を上回り1,000万円以下・・・1万円
業務委託契約書は、契約金額が1万円を超えるか、3カ月以上の継続的取引の場合に印紙が必要になります。印紙の貼付や消印を忘れると過怠税を徴収されるため、注意が必要です。
契約書に記載のないトラブルは?
どれほど詳細な契約書を作成しても、契約書に記載のないトラブルが発生することが考えられます。そのようなときは、どうすれば良いのでしょうか?
実は、契約書に記載のないトラブルがあった場合には、当事者に適用される法律に従います。フリーランスが法人化しているのであれば会社法や商法、イラストレーターやライターなどであれば著作権法、さらに広範囲なトラブルであれば民法も適用されます。
そのため業務委託契約書の作成に迷った時は、業務内容や報酬、期日などの重点項目を中心に作成します。その上で、可能な範囲で予想されるトラブルに対処する項目を追加することが無難と言えます。
契約書の作成にあたって注意しておきたいポイント
業務委託契約書は、フリーランスの労働や報酬を明確にするものとして有効です。
しかし、すでに信頼関係が結ばれているクライアントに突然契約書を求めることは、あまり印象が良いとは言えません。
お互いに信頼関係ができているのであれば、これまでよりも長期の契約をするときや、報酬額が大きく増えるときなどを目安に、契約書を要望、提案するほうが自然です。
逆に初めて契約するクライアントで、業務に月の半分以上の日数を必要とするなど、未支払いになった場合のリスクが高い場合には業務委託契約書をがある方が安心です。
また、お互いのことが分からない初期は、委託者側も契約が遂行されるのか不確定で不安だと言えます。業務委託契約書を作成することには、双方が安心できるというメリットもあるため活用しましょう。
契約書の疑問点は必ず確認
業務委託契約書は内容を確実に把握しておき、少しでも疑問がある場合は、クライアントに確認してから業務を進めることが必要になります。認識の差を埋めておくことが、後々のトラブルを防ぐことに繋がります。
契約内容の確認履歴は保存
確認する際のメールやチャットなどは、必ず記録として残しておきましょう。
業務内容を確認したメールやチャットなどは、業務委託契約の一部として取り扱われるためです。
まとめ
今回は、業務委託契約書について解説しました。
契約が、思いのほか簡単にできてしまう事に驚かれたのではないでしょうか?
契約自体が非常に自由度が高いため、フリーランスは自由と同時に責任も背負うことになります。自身のスキルと限られた時間を有効に活用するために、契約交渉は慎重に進めましょう。
そして、契約が合意に至った場合には、合意した条件を、曖昧さを残さない明確な文言で業務委託契約書に残すことが大切なポイントです。
投稿者プロフィール
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私は10年以上にわたり、デザイナーとしてのキャリアを積んできたフリーランスデザイナーです。デザインの魔法に魅了され、クリエイティブなアイデアを実現することが私の情熱です。
さまざまなデザインプロジェクトに携わり、ロゴ、ウェブ、印刷物、パッケージなど、多岐にわたる分野での経験を積んでいます。美しさと実用性を融合させ、クライアントのビジョンを実現するお手伝いを心から楽しんでいます。
クライアントとの協力を大切にし、オープンなコミュニケーションを通じて共にプロジェクトを築き上げます。納期を守り、高品質な成果物を提供することをお約束します。
私のデザインはビジネスに魅力を与え、ブランドを輝かせます。クリエイティブなアプローチと柔軟性を大切にし、クライアントの期待をいつも超えることを目指しています。一緒に素晴らしいプロジェクトを実現しましょう。
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