スマートフォンの普及やインターネット回線の高速化にともない、スマートフォンからWebサイトを訪れるのが当たり前となっている現代。そういったなかで各企業がオウンドメディア(媒体)を持つようになり、自らコンテンツ(情報)を発信するのが当たり前になっています。そのためWeb制作やWebデザイナーの需要が高まっています。
Web制作は裏方のシステム開発とは異なり、ユーザーが一番に目につく部分でとても人気のある仕事のひとつです。
でも、
「フリーランスでWeb制作を仕事にするにはどうすればいい?」
「未経験でも始められる?」
そのような疑問をお持ちではないでしょうか。本記事ではフリーランスでWeb制作を仕事にする方法や、必要なスキルなどを解説しています。フリーランスでWeb制作に興味がある人は、ぜひチェックしてみてください。
目次
Web制作のフリーランスとして活動は可能なのか?
結論からいうと、Web制作のフリーランスとして活動することは可能です。これまではWeb制作の仕事となると制作会社に発注するのが一般的でしたが、現代ではフリーランスに発注する企業も増えています。
Web制作でフリーランスが選ばれる理由
企業に発注するよりも低コスト、短期間で済むことが挙げられます。企業に発注すると各工程で専門の人がいたりするので、その分コストが必要です。また、担当者にしかわからないことがあるので、ちょっとした疑問に対しても返答に時間が掛かったりと、レスポンスや納期にも影響がある場合も。
一方でフリーランスは少人数で仕事を進めているケースが多いため、スピード感を持って対応できます。ただし、多くのフリーランスはプロの制作会社のようなクオリティを提案できないケースもあるので、企業を相手にする場合は相応のスキルが必要です。
ほかにフリーランスとして活動できる理由に、技術の進歩によってWeb制作に関するハードルがさがったことが挙げられます。Web制作はプログラミング言語の理解が比較的容易で、CMSというサービスを使えばプロのようなアウトプットが可能です。
Webサイトのジャンル紹介
Webサイトと言ってもこれだけあるのです。それぞれ目的やターゲット、搭載する機能が異なります。
「Web制作の需要は途絶えることはないんじゃないか?」と思いませんか。
ジャンル | サイトの内容 |
コーポレートサイト | 企業のホームページ |
サービスサイト | 事業別に特化したサイト |
ECサイト | 商品やサービスの決済まで行うサイト |
プロモーションサイト | 販売促進専用サイト |
ブランディングサイト | 企業のブランド専用サイト |
リクルートサイト | 人材採用に特化したサイト |
メディアサイト | ニュース記事やSNSのサイト |
Web制作も多様な時代に
Web制作はデザインと切っても切れない縁があります。なぜなら、Webは誰でもアクセスできるため、いかにユニバーサルデザイン寄りなものを作れるかが重要なポイントのひとつだからです。
例えば色覚障害を持つ人でも不便なく閲覧できるように、色使いを抑えたシンプルなデザインにしたり、モノクロやグレースケールデザインに切り替えられる機能を付けたりするのもよいでしょう。またジェンダーレスを意識したユニセックスなイメージで他のサイトと差別化を図ることもできます。
こういったデザインの知識からWeb制作は無限の広がりの可能性を秘めています。
ホームページ制作で最も重要なのがLPです。ランディングページと言ってホームページの顔の部分です。LPの出来具合によりユーザーの離脱率に大きく関わります。「他のサイトよりもなんか違う」と思われるようなホームページ制作を目指しましょう。
Web制作フリーランスの仕事の流れ
それではWeb制作の流れをみてみましょう。
案件を受注
本来フリーランスは、自ら営業をかけなければ仕事は受注できません。しかしながら最初は営業の自信がない段階でしょうから「Crowd Works」や「Lancers」などのクラウドソーシングサービスをうまく利用しましょう。これらのサービス上には、企業や個人がWeb制作の募集をしている案件があるので、ここで仕事を獲得しましょう。ただし何も実績がない人が取るのは難しいので、まずはポートフォリオ(制作実績)をつくることが大切です。
まだ実績がない場合は、自分でホームページ制作をし、流入を狙うのもひとつです。もしくは知り合いの企業や店舗を手伝うなどでWeb制作をつくってみることをおすすめします。そこで流入があった場合は、ポートフォリオのひとつになります。
ほかにもTwitterなどのSNSで営業をかけて仕事を獲得する方法があります。Web制作について発信を続けると、SNS経由で仕事の依頼が来ることも。SNSとうまく絡めて、仕事を獲得しましょう。
ヒアリングや打ち合わせ・契約
サイトの目的をまずは明確にしましょう。クライアントから情報を引き出すことも営業です。目的がズレるとイメージが噛み合わず失注してしまうこともありえます。
開発に関してはWordPressなどのCMSを使わずに、オリジナルで制作するのか否かで契約内容がガラリと変わります。WordPressは簡単にホームページ制作ができるものの、枠組みがすでに構築されているがゆえに、デザインの面で融通が効かないことや、逆に改変が大変な面もあります。「一からオリジナルで構築したほうがコスト面で有利だから」とあえてWordPressを使わないWeb制作会社もあるくらいです。全ての案件がそうではありませんのでクライアントの目的と情報をよく引き出した上で決めましょう。
また、どの部分までが料金に含まれるのか、追加料金が発生するパターンも伝えておきます。
デザイン設計・コーディングの実施
絵コンテを用いたり、デザインソフトで絵を描きます。設計やイメージの足並みを合わせておくためにクライアントには都度確認と相談を繰り返しましょう。この部分をしっかりやることで出戻りなくお互いに損をせずに仕上げることができます。最悪トラブルにもなりかねませんので慎重に行います。
デザインが決まればあとはコーディング(プログラミング)を行っていきます。
開発はこちらのローカル環境で行うのが一般的です。
確認・修正対応
デバッグと呼ばれる動作確認を行います。開発中は模擬サイトで操作して不備や不具合を修正していきます。完成したらクライアントに確認をしてもらい、必要があれば修正を繰り返します。こちらの不備や不具合ならば無償で対応すべきですが、当初の仕様どおりにもかかわらず修正を依頼された場合は相談をして基本的に有償で対応するようにしましょう。
公開・納品
開発はこちらのローカル環境で行うため、最終的にはそれらのデータを全てクライアントのサーバーに移さなければなりません。クライアントがサーバーを用意していない場合もありますので注意しましょう。
納品方法としては大きく分けてファイル送信と移行の2パターンがあります。
アフターフォロー・運用
Web制作フリーランスとして意外と重要なのがこの部分です。実はホームページ制作をしておしまいというパターンが少なくありません。契約としてホームページ制作までなのかそれともその後の運用も含めるのかは決めておいたほうがよいでしょう。もちろん、運用は無償ではできませんので、仕事として受けるべきです。クライアントの中には料金がかかっても運用をお願いしたいという要望が実は隠れていることもあります。運用にはサーバー管理費、ドメイン管理費の更新が年または月単位で必要です。
Web制作フリーランスになるためには何をするべき?
ではWeb制作フリーランスになるには何をするべきかを解説します。CMSというサービスを使うと比較的簡単にWeb制作は可能ですが、CMS以外にもスキルを更新していくように心掛けましょう。
CMSのスキル
CMSとはWeb制作に必要な専門知識がなくても、簡単につくれるシステムを指します。代表的なサービスにWordPress(ワードプレス)といったものがありますが、直感的に操作できるため、知識があまりなくても作成可能です。
ただし扱いやすい面がある一方で、ほかのサイトと差別化するために細かなデザインを指定するのがむずかしいことも。その場合は以下のようなスキルを身に付けることも大切です。
HTML/CSSのスキル
Webページの表示の部分に関わるのが、HTMLとCSSのスキルです。HTMLはWebページを作成するための言語のことで、CSSはWebページの文字の色や大きさなど、表示方法やデザインに関わる言語のことです。これらのスキルを持つことで細かなデザインの指定なども可能となり、よりクオリティの高い制作が可能となります。
JavaScriptのスキル
サイトを訪れた際にマウスを動かすと、アニメーションが機能するのを見た経験はないでしょうか。JavaScriptとはそういった動きを指定するためのプログラミング言語のことであり、サイトの多くに使われています。サイトを訪れた際にユーザーの指示によって双方向性が持たれると、ユーザーのサイト滞在率が向上します。HTMLやCSSが表示に関することに対し、JavaScriptは表現に関することと覚えておきましょう。
PHPのスキル
Webページのおおよそ8割に活用されており、Webアプリケーションには欠かせません。例えば、問い合わせフォーム、入力によるイベントの発生、検索機能など、Webページにあらゆる機能を搭載させることができます。
SEOスキル
SEOとは検索エンジンの最適化のことを指します。SEOと聞くと、Web記事を書くときにGoogleなどの検索エンジンでトップ表示されやすいキーワードをちりばめたコンテンツづくりをすることだと思っていませんか?実はそれだけではなくホームページの構造自体も関係しています。例えば「表示更新速度が速くてスムーズな設計になっている」「モバイル表示を考慮したサイト設計」になっているなど内部の技術的な面も評価しています。これらはプログラミングに関係していて、いかに効率の良いコードが書けるかがポイントになります。
納品スキル
すでに、納品方法が大きく分けてファイル送信と移行の2パターンがあることは説明しましたが、意外と忘れがちなスキルなのでもう少し詳細にお伝えしておきます。
クライアントが自らサーバーにアップロード
サイトデータを圧縮してファイルを送信します。容量が大きくてメールやチャットツールでは送れない場合、大容量送信サービスを使ってクラウド経由で納品する必要があります。
こちらでクライアントのサーバーにアップロード
FTPツールでファイルを送信します。サーバーとのファイルのやり取りをしてくれるのがFTPツールです。簡単に言うとクライアントのサーバーのホスト名、ユーザー名、パスワード(これらをFTP情報という)を教えてもラテ、こちらのサーバーからクライアントのサーバーに転送するやり方です。クライアントのサーバーには大事なデータが入っていますので不用意にアクセスしたり削除したりしないよう細心の注意を払う必要がありますが一括で作業が完了するため便利です。
WordPress案件は本番環境に移行
クライアントのサーバーにプラグインします。WordPressのデータがどこにあるかを理解していないといけませんが、テーマとファイルをクライアントが用意している本番環境に移す比較的単純な作業です。
Web制作フリーランスの平均年収はいくら?
フリーランス協会が発表した『フリーランス白書2023』によると、「クリエイティブ・Web・フォト系」を仕事としているフリーランスの約5割が年収400~800万円と回答しています。ほかのフリーランスの職種と比べてみても、おおむね悪くはないですし、なにより前年に比べて、この層の割合が倍増しているのです。
また、中央値は300〜400万円です。これは会社員もフリーランスもさほど変わりません。ただし、500万円以上の人に注目してみると、会社員は全体の約10%程度に対し、フリーランスは50%もいます。つまり企業勤めのほうが天井が見えてしまっているとも言えます。フリーランスの中には年収が1000万円の強者もいますが、まずは金額よりも安定的に稼ぐことを目標としましょう。
フリーランスが増えていることや技術の進歩によって、参入ハードルが低くなっていることからも、今後もライバルが増えることが予測されます。前述したように、より高いスキルの向上が必要といえるでしょう。
未経験でもWeb制作フリーランスとして活動できるのか
未経験では、Web制作のフリーランスとして生計を立てるのは簡単ではありません。そこでフリーランスとして活動するためのステップを紹介します。
独学
まず知識やスキルを身に付けるには、書籍などから独学で学ぶこともできます。ただし、独学は予習のつもりで流す程度にしておくことをおすすめします。独学で勉強する際にわからないことで壁にぶつかると、挫折するリスクがあります。もし独学で学ぶ場合は自分でホームページ制作をし、実際に流入があるかどうか検証しましょう。そこで流入があれば仕事や就職時の実績にもつながります。
Web制作スクールに通う
お伝えしたとおり独学は挫折しやすく時間が掛かることが予測されます。一刻も早くフリーランスとして活動したい人は、スクールに入るのがおすすめです。
スクールのよい点は体系的にスキルを学べることや、わからないことを質問できる点です。
Web制作企業に就職する
Web制作企業に就職することをおすすめします。企業ではスキルを覚えることはもちろん、仕事全体の流れや、業界のなかでコネクションをつくることも可能です。フリーランスとして独立した際にコネクションがある場合は、仕事もうまくいく可能性が高まります。
副業で案件に取り組む
企業で勤めながらもおすすめしたいのが、実際に副業を通して自分でお金を稼ぐことです。会社員とフリーランスでは責任の重みも変わってくるので、副業で経験することをおすすめします。
フリーランスとして独立する
副業の収入が本業を上回り、生活できる目途が立ったらフリーランスの独立も視野に入れましょう。間違ってもいきなり独立することを考えるのはやめましょう。
フリーランスとして活動する際の注意点
フリーランス全般に言えることですが、いざフリーランスになろうとしたときは不安がつきまといますよね。例えば今まで会社員として仕事をしてきた方にとっては勝手が違います。フリーランスになった後に「こんなはずではなかった」と後悔しないように注意点を抑えておきましょう。
固定給ではない
フリーランスの給与は報酬制です。案件ごとに報酬が決まりますので会社員のように毎月または毎年決められた給与収入にはなりません。したがって、ライフプランが立てにくくなり、不安に感じることがないとは言い切れません。
金銭関係の審査が通りにくい
例えば、クレジットカードを発行する、ローンを組むなど、お金を前借りする仕組みの手続きでは審査が通りにくい傾向にあります。前述した「固定給ではない」点と会社という後ろ盾がないことが理由に挙げられます。フリーランスは社会的信用度が低いという概念が、残念ながらまだ根強く残っているのが実情です。
経理事務の発生
会社員の場合、仕事に対して発生する収支の管理は誰が行っていますか?エンジニアが自分で管理することはないはずです。確かに計画に対してどれくらいコストや時間がかかるか見積もりをすることはありますが、収支を帳簿につけるのは経理の仕事ですよね。ところがフリーランスの場合はそれを自分で行う必要があります。エンジニアの仕事だけやっていればいいというわけにはいきません。しかるべき税金を納めるもしくはキャッシュフローの証明のために帳簿は役立ちます。
国民健康保険・国民年金の負担
フリーランスは基本的に国民健康保険に加入しますが、会社員を辞めた場合は国民健康保険に切り替えるか、会社で入っていた健康保険に継続して加入(任意継続)するかを選択できます。さらにフリーランスは国民年金にも加入します。今まで会社と保険料を半分ずつ負担すること(労使折半)ができましたが、全額自己負担になりますので注意してください。
各種補償がない
執筆時点でフリーランス向けの労災保険はありません。労災保険は雇用関係にあることが前提です。ただし、厚生労働省はフリーランスでも全業種で労災保険に加入できるような制度改正を2024年中に行う計画があり大変注目されています。
また、トラブルにより損害賠償を被ることになった場合、自分でどうにかしなければなりません。今ではフリーランス向けの損害賠償保険もありますので検討してみてください。
報酬に消費税が含まれない?
2023年10月に始まったインボイス制度は、受注者が適格請求書(インボイス)発行事業者の場合に限り、発注者は消費税分の控除(仕入額控除)ができるようになる制度です。受注者であるフリーランスが免税事業者の場合、発注者であるクライアントは仕入額控除ができなくなるため、控除ができないのに消費税をフリーランスに支払わなければいけない状態になります。こうなるとクライアントとしては適格請求書発行事業者である受注者と取引をしたくなります。相手が免税事業者だった場合、消費税分の控除ができないからと言って意図的に取引数を減らしたり、報酬から消費税分を減額されてしまう可能性があるのです。本来ならばこれはルール違反なので認められませんが、残念ながら実態として起きてしまいます。
まとめ
本記事ではWeb制作のフリーランスに必要なスキルや、フリーランスとして活動するための方法について紹介しました。Web制作のライバルも増えているなか、フリーランスとして活動するのは容易ではありません。しかしながら具体的なステップで紹介したような手順を踏めば、フリーランスとして活動できる可能性もあるので、ぜひ参考にしてみてください。
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CyMagazine編集部です!
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